厚生・労働2017年02月06日 障害福祉法制の展望 発刊によせて執筆者より 執筆者:柳田正明
近年障害福祉関係の事業所の数は増加の一途をたどり、その運営に関わる事務の量が増加しています。この現象は何故生じたのか、時期を介護保険制度発足と同じくして行われた社会福祉基礎構造改革の頃に遡って考えたく思います。「措置から契約へ」、この改革に連動する契約制度の導入で障害福祉では平成15年に支援費制度が身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法の障害児に関わる部分の改正により導入されました。しかし、財政上の理由で制度存続は困難になり、財源確保を意図した負担形態の変更(応能負担から応益負担の導入)、その負担を可能にするための就労支援の強化や工賃の倍増計画、給付を合理化するためのサービスの細分化、それを可能にするためのケアマネジメントの導入など、これらを含んで平成18年に障害者自立支援法が生まれ、その数々の問題点が指摘される中でつなぎ法といわれる同法改正を経て、現在の障害者総合支援法が成立し、直近では平成28年に見直し改正がなされ一部を除き平成30年施行に向けての準備がなされることになります。支援費制度から14年を経る間で、日常生活に関わる具体的なサービスを規定する法は変容を繰り返しました。その背景には、少子高齢化の進行、人口減少社会の到来、これらによる急激な社会変動、加えて災害復興やオリンピック準備等の経済政策的な要因による人材不足、さらに入所施設から地域生活への移行の推進の継続が課題として存続しています。これに加えて、障害者権利条約批准と障害者差別解消法制定による合理的配慮の捉え方の課題、精神障害者保健福祉法の退院促進を主とした改正、障害者虐待防止法を制定しても増加の一途をたどる障害者虐待への対応、10年ぶりに改正となった発達障害者支援法の内容にある生涯にわたって一貫した支援をいかに行っていくのか、放課後等デイサービスの事業所数の急激な増加と支援の質の問題など、課題は山積な状況です。また、将来の大きな動きを示すもののひとつには、新たに障害者総合支援法のサービスとなった「自立生活援助」では、地域生活支援拠点としての事業所を設置し、現在グループホームで生活している方で地域のアパートなどで生活することを希望する方には移行する支援を行い、あるいはすでに地域で生活している方を対象に巡回して支援するというもので、これが進展すれば、より一層地域に密着した小規模で数の多い事業所が増加することになるでしょう。更には、サービス等利用計画、個別支援計画など専門的な知識を求められる計画相談に関する実務の増加も見込まれ、運営に関する事務の増加は専門の実務への影響も避けられない危機が生じる可能性があります。制度の変更に事務が追われて本来なすべき事業に影響が出ないように意識することが必要です。
(2017年1月執筆)
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