相続・遺言2023年11月29日 相続土地国庫帰属制度の利活用促進の一助になれば 発刊によせて執筆者より 執筆者:横山宗祐
この度、新日本法規出版株式会社より、『政省令・施行通達対応 相続土地国庫帰属制度 承認申請の手引』という書籍を出版させていただくこととなりました。内容としては、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)」(以下「相続土地国庫帰属法」といいます。)及び同法の政省令・施行通達等を分析し、実際に同制度を利用する相続人やそれらの方々をバックアップする専門家の皆様が、同制度をスムースに利用できるよう、申請のお手伝いをする目的で作成させていただいたものです。
本書を企画したきっかけと致しましては、同じく新日本法規出版株式会社から令和4年4月に発刊された『令和3年改正民法対応 負動産をめぐる法律相談 実務処理マニュアル』を作成する過程で、編集者・執筆者間での議論の中で生まれました。同時期に成立した民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)や相続土地国庫帰属法は、その制定目的としては、所有者不明土地対策として、その発生予防と土地利用の円滑化を目指すものです。そして、同書では、土地以外の財産にもフォーカスしておりますが、財産の利活用を目的に編集者・執筆者が知恵を絞っておりました。
負動産の一類型である所有者不明土地の発生予防として、法制審議会で丁寧に検討がなされ、解決策として示されている相続土地国庫帰属制度を、より有効活用するには何が必要かを検討していたところ、相続土地国庫帰属制度は新しい制度であることから、同制度の申請手続を細かくまとめた書籍がまだ存在しないこともあり、「実際に手続をしようとした際、手続の流れや申請上のポイント等を把握するというスタートラインからハードルが高いよね?」という話になりました。そのため、新しい制度を利活用するためには、その制度を利用する人が、制度の趣旨等を理解でき、実際に手続を執り行う者がスムースに手続ができるよう、わかりやすい書籍を作るのも一つの方法ではという結論に至り、本書を執筆することになりました。
本書では、「相続土地国庫帰属制度の利用を検討した際、利用できる土地とそうでない土地の分水嶺はどのあたりと想定されるか?」、「相続土地国庫帰属制度についてのアドバイスを行う際に、何に気を付けたら良いか?」、「専門家としてどのようなアドバイスが可能か?」、「どのようなかかわり方が可能か?」などがすぐにわかるようになっております。
相続土地国庫帰属制度は、施行後5年を経過したタイミングで、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするとされております(相続土地国庫帰属法附則2条)。現在は、相続により所有権を取得した土地等を対象とした限定的な所有者不明土地発生防止策となっておりますが、施行後5年間の間に、同制度の利用が活発となれば、適用範囲が広がる可能性はゼロとはいえません。
少なくとも、相続土地国庫帰属が活用できる場面では、積極的な利用がなされ、相続土地国庫帰属制度が広く市民権が得られる環境となれば、所有者不明土地の発生に一定の歯止めがかかる可能性があります。
所有者不明土地問題については、社会経済的に大きな損失が生じていると研究会にて提言され、その予防と解消にむけて、関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となって総合的な対策を検討・提案されております。しかし、どんなによい制度を作ったとしても利用されなければ、問題の解決は図れません。
そこで、相続土地国庫帰属制度の利活用を促進するため、以下の視点をもって、本書を作成させていただきました。
本書が、これをお手に取っていただいた皆様が相続土地国庫帰属申請を選択するきっかけとなること、そして所有者不明土地の発生防止の有効な手段としての地位を相続土地国庫帰属制度が担うことを祈念しております。
(2023年11月執筆)
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執筆者
横山 宗祐よこやま しゅうすけ
弁護士
略歴・経歴
平成16年 弁護士登録(横浜弁護士会(現:神奈川県弁護士会))
平成20年 東京弁護士会に登録替
平成29年 東京弁護士会 弁護士倫理特別委員会 副委員長
令和元年 東京弁護士会 法制委員会 副委員長
日本弁護士連合会 所有者不明土地問題に関するワーキンググループ 委員
令和4年 日本弁護士連合会 司法制度調査会 委員
司法制度調査会民事法部会 「法制審区分所有法制部会」 副座長
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