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民事2021年12月16日 自動車産業における100年に1度の大変革 発刊によせて執筆者より 執筆者:友近直寛

1 CASE

 自動車産業界における技術革新の方向性を示す言葉として、「CASE」というキーワードがあります。これは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared&services(シェアリング)、Electric(電動化)の4つのヴィジョンの頭文字をとった造語です。2016年9月にパリで開催されたモーターショーにて、ダイムラーAGのディーター・ツェッチェCEOが、グループの中長期戦略として用いたのが始まりです。以降、この言葉はダイムラーのみならず、多くの自動車メーカーが同調する全世界的な産業ヴィジョンとなりました。
(Connected)技術により、自動車が携帯電話と同じように外部とインターネットで接続され、モバイルPC化すると見込まれています。(Autonomous)技術により、自動車の自律的な走行が可能となり、運転者が運転行為から解放されます。(Shared&services)技術により、従来の「自身が所有するクルマを利用する」という形から、共有する・借りる・貸す・乗り合う・乗せるという多様な利用の形を選択できるように、自動車の供給体制に変化が生じます。(Electric)技術により、自動車の動力源の主流を化石燃料から蓄電池に変え、単純で自動運転に親和的な自動車構造とすることができます。電動化の技術は、自動車使用の場面におけるカーボンニュートラルへの効果も期待されています。

 これらのヴィジョンは着実に技術レベルでは達成されており、実装に向けたハードルを取り払うために政策・法整備が徐々になされている状態です。これらの技術が実装可能となれば、相互に関連し合い、自動車を取り巻く産業構造が劇的に変化することが予想されています。これはビジネスチャンスが生まれると同時に、様々なリスクが潜む隙が生まれるということでもあります。このリスクを正しく見通すことがこれからの自動車産業に必要な視点といえるでしょう。

2 MaaS

 上記のCASEと並んで、道路交通に関連するキーワードとして、「MaaS」という言葉があります。これは、Mobility as a Serviceの略で、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて、検索・予約・決済等を一括で行うサービスのことをいいます。フィンランドのスタートアップ企業MaaS Global社の創業者サンポ・ヒエタネン氏によって、2006年に発案され、2016年ヘルシンキでスマートフォンアプリケーションとしてサービスが開始されました。現在、フィンランドのほか、イギリス、ベルギー、オーストリア、ドイツ、スウェーデン、スイス、リトアニア、イスラエル、中国、アメリカ等の都市で同種のサービスが社会実装されています。日本では、過疎地における移動手段の確保や観光地における二次交通の確保という課題解決を目的として、導入に向けた実証実験が各地で行われている状態です。

 上記CASEの技術革新とこのMaaSのサービスが組み合わさると、人流に関する社会通念が変容する可能性があり、同じような変化が物流の世界でも起こる可能性も秘めています。ここでも、新たなビジネスチャンスが生まれると同時に、様々なリスクも生まれることになり、そのリスクマネジメントを行うことが今後の自動車産業に必要な視点だろうと考えられます。

(2021年12月執筆)

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執筆者

友近 直寛ともちか なおひろ

弁護士

略歴・経歴

2007年 京都大学法学部卒
2010年 大阪大学大学院高等司法研究科卒
2014年 弁護士登録(愛知県弁護士会・67期)

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