経営・総務2025年06月25日 発刊によせて 発刊によせて執筆者より 執筆者:富川昌之

公益法人は、民間公益の担い手として大きな潜在力を有しています。しかし、従来の制度のもとでは、「儲けてはいけない」「ため込んではいけない」といった規制により、資金の有効活用や積極的な事業拡大が難しく、また、事業内容を変更する際にも事前の「変更認定」手続が必要で時間を要するなど、その潜在力を発揮しにくい状況にありました。
こうした課題を受け、公益法人が多様で変化の激しい社会ニーズに柔軟かつきめ細やかに対応し、新たな事業展開に挑戦できるよう、令和7年4月1日から公益法人制度が改革されました。
今回の改革では、まず、寄附金などの資金を効果的に活用して公益的活動を拡大できるよう、収支相償の原則や遊休財産に関する規制が見直され、財務面での規律が柔軟かつ明確になりました。また、公益性に大きな影響を及ぼさない事業の変更については、事前の認定ではなく届出による手続となり、事業や組織の再編が柔軟かつ迅速に行えるようになるなど、行政手続が簡素化・合理化されました。
一方で、国民の信頼と支援を得るために、外部理事・監事の導入などによる自律的ガバナンスの充実、3区分経理(公益目的事業、収益事業等、法人運営)を原則とすることによる透明性向上といった措置も講じられました。このような改革により公益法人制度はより実践的かつ活用しやすいものとなり、民間公益活動の一層の活性化が期待されています。
本書では、これら最新の改正内容を踏まえ、一般社団法人・公益社団法人・一般財団法人・公益財団法人の運営に必要な年間スケジュールをカレンダー形式で示しています。さらに、各日程に関連する手続きの流れをフローチャートで解説しています。
まず、「はじめに」では、令和7年4月1日から施行された「新しい時代の公益法人制度」について概要を説明し、法人運営に必要な手続きの年間スケジュール例を「法人運営カレンダー」として提示しています。続く第1章「法人運営」では、法人運営に関わるさまざまな手続きについて解説しています。第2章「設立・移行・解散・清算・合併等」では、法人の設立、公益法人への移行、解散・清算、合併・事業譲渡などの手続きについて詳しく説明しています。さらに、第3章「税務申告・届出等」では、法人税や寄付者に関する税務手続きをフローチャートで説明し、実務上の留意点を整理しています。加えて、公認会計士・税理士としての実務経験を踏まえ、特に参考になる事例をコラムとして掲載しています。
本書が一般社団法人・公益社団法人・一般財団法人・公益財団法人の皆様をはじめ、公認会計士、税理士、弁護士など、実務に携わる方々にとって有益な一冊になることを願っています。
(2025年6月執筆)
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