相続・遺言2025年03月19日 この世には地獄がある 発刊によせて執筆者より 執筆者:小松達成

炎が吹き上がり鬼が責め立てる死後の世界のことではなく、法律の世界にひっそりと口を開けた、名もなき地獄だ。
――その名も「負動産」。
不動産は資産であり、所有していれば価値が上昇すると言われた時代は、遠い昔である。今や、不動産は資産であるどころか、ときに所有者を苦しめる呪いとなる。売れない、貸せない、多額の費用がかかったりする。
不動産が「負動産」に転じたとき、逃げ場を失った所有者たちは、いずれ弁護士や専門家のもとを訪れることになる。「先生、この不動産、もういらないんです。どうにかして処分できませんか?」と。
こうして弁護士は、「負動産」の地獄に遭遇する。
たとえば、周囲に危険を及ぼす建物があるが、建物を所有する会社の実体がなく、建物解体には莫大な費用がかかるという土地を相続してしまった例。行方不明の渉外相続人のいる建物に担保を設定していた例。原野商法の土地、アスベストの使用された建物、ゴミ屋敷、迷惑行為を繰り返す賃借人のいる建物。処分が難しい資産は、不動産だけではない。動産、債権、株式の場合もある。価値だけは高いが処分困難で多額の相続税がかかる非上場株式…。読めば読むほど、「こんな負動産、遭遇したらどうしよう……」と震え上がること間違いなしである。
本書は、そんな「持っているだけで苦しみを生む負動産」の事例を集めた一冊である。弁護士が実際に関わり、あるいは想定した「負動産」の事例について、その対応策とコストをケース別に明らかにしている。「令和3年改正民法対応 負動産をめぐる法律相談 実務処理マニュアル」の続編として、ご活用いただきたい。
本書を執筆した弁護士たちが、「負動産」に遭遇したときの絶望感や、それでも諦めずに「負動産」との戦いに挑んだ際の悪戦苦闘ぶりに笑っていただければ幸いである。
しかし、これは他人事ではない。今は笑っているあなたも、「負動産」と遭遇し、この地獄の住人になっているかもしれないのだ。
(2025年3月執筆)
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