教育・宗教2026年01月16日 多忙な園長・主任必読!カスハラから職員を守るための初動対応と組織的防御 発刊によせて執筆者より 執筆者:木元有香

近年、教育・保育現場に限らず、顧客や利用者からの度を越えたクレーム、いわゆる「カスタマーハラスメント(略称「カスハラ」)」が、問題となっています。
1 カスハラの定義
改正労働施策総合推進法(令和7年6月11日法律63号)では、カスハラを
①職場において行われる、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、
②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
③当該労働者の就業環境を害すること
と定義しています。
2 カスハラの具体例
この定義は抽象的であるため、実際は何がカスハラになるのか、具体例を知りたい園長・主任も多いことでしょう。
例えば、東京都教育委員会の「学校と家庭・地域とのより良好な関係づくりに係るガイドライン(素案)」(2025年度内に指針がまとめられ、2026年度から都立学校で適用される予定です。)では、保護者からのカスハラについて参考となるような次の具体例が挙げられています。
①社会通念上相当な範囲を超える対応の強要:主に要求の量や頻度、行為の場所・方法が社会通念を逸脱しているもの(例:長時間拘束、執拗な電話、教育活動への過剰な干渉)
②合理性を欠く不当・過剰な要求:主に要求の内容そのものが、合理的でないものや学校の権限や教職員の立場を超えているもの(例:土下座要求、個人への金銭要求、成績変更要求、担任変更の要求)。
こうした行為は、職員の心身の健康を害し、園の安全配慮義務(職員の生命・身体・健康を守る義務)違反に繋がりかねません。
3 カスハラへの対応(初動対応)
カスハラへの対応は、職員個人の責任ではなく、組織として管理職(園長・主任など)が中心となって対応するのが基本です。
具体的な初動対応の原則は以下の通りです。
①複数人での対応:カスハラ発生時には、職員一人で対応せず、必ず複数人で対応する。
②対応時間の明示と制限:長時間の拘束を防ぐため、対応時間を決め、毅然と対応する。
③記録の徹底:日時、内容、対応者など、対応記録を必ず残す。この記録は、その後の組織的な対処や法的対応の重要な根拠となります。
また、対応が困難な場合は、必要に応じて警察や弁護士と連携し、問題が解決しない場合は立入り禁止措置や法的対応を検討することも、職員を守るためには必要です。
さらに、被害を受けた職員の精神的ケアを優先し、医師や臨床心理士などの専門家に相談対応を依頼することも検討してください。
4 カスハラ対策の土台
『図解/詳解 保育現場で起こる ハラスメント大全-忙しすぎる園長・主任が押さえておくべきポイントはここ!-』は、
・カスハラ発生時の対応
・カスハラ発生未然防止のための予防策
・カスハラ対応指針の例示
それぞれにつき、「忙しすぎる園長・主任」がすぐに活用できる実践的な内容を記載しております。
本書をご活用いただくことで、カスハラ対応が明確となり、職員が疲弊することなく、子どもたちの教育・保育に専念できる環境を確立することができます。
ぜひ、貴園のカスハラ対策の土台としてお役立てください。
(2026年1月執筆)
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執筆者

木元 有香きもと ゆか
弁護士・保育教諭
(木元有香法律事務所 代表弁護士)
略歴・経歴
2005年 東京大学法学部卒
2007年 東京大学法科大学院修了、司法試験合格
2008年 最高裁判所司法修習修了、弁護士登録(第二東京弁護士会所属)、国内法律事務所入所
2014年 保育士資格取得・登録
2018年 幼稚園教諭一種免許状取得
2024年 白百合女子大学非常勤講師(担当科目:女性と法)
2025年 木元有香法律事務所開設
〈主な著書〉
『図解/詳解 保育現場で起こる ハラスメント大全-忙しすぎる園長・主任が押さえておくべきポイントはここ!-』(新日本法規出版)著、『幼稚園・保育所・認定こども園のための法律ガイド』(フレーベル館)著、『保育現場における困りごと相談ハンドブック-保育士・保育教諭のお悩み解決のために-』(新日本法規出版)著、『お答えします! マンガでわかる 保育士のための法律相談』(新日本法規出版)著、『事例から理解する 保育施設の個人情報取り扱いガイドブック: ICT時代に必要な対策』(中央法規出版)編著、『企業のうつ病対策ハンドブック』(信山社)共著、『Q&A 外国人をめぐる法律相談』(新日本法規出版)共著、『ここが変わる!!新たな税務調査手続への対応』(ぎょうせい)共著、『改正社会福祉法で社会福祉法人の法務・財務はこう変わる!』(清文社)共著、『第2版 ハラスメントの事件対応の手引き』(日本加除出版)共著、『Q&A 社会福祉法人制度改革対応ガイド』(ぎょうせい)共著、『日経MOOK 社長のための残業時間規制対策』(日本経済新聞出版社)共著、『迷ったときに開く 実務に活かす印紙税の実践と応用』(新日本法規出版)共著
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