紛争・賠償2026年09月11日 集中豪雨と車両保険 発刊によせて執筆者より 執筆者:志賀晃

近時、集中豪雨による大規模被害が毎年のように発生しています。今年(2026年)の夏も、いわゆる令和8年千葉豪雨により、600棟近い建物での床上浸水等の甚大な被害が生じています。この豪雨については、発生直後、浸水等により走行不能となった多数の自動車が道路上に残されたままとなっている状況をニュース番組等でご覧になった方も多いでしょう。
先日刊行された「事例にみる物損交通事故主張のポイント」(新日本法規出版、2026)では、その対象が交通事故であったことから、車両保険と自然災害の関係には触れていませんでした。そこで、この場を借りて、車両保険の被保険車両が集中豪雨により損傷した場合の法律関係等について述べたいと思います(ただ、車両保険の具体的な内容については各損害保険会社の約款で異なる可能性があること、また、特約が存在し、その内容により補償対象や支払保険金額等がかわる可能性もあることにご注意願います)。
まず、多くの車両保険では、集中豪雨も補償対象とされています(ただし、自動車相互間衝突危険担保特約等の特約の存在により、補償対象外となることもあります)。
また、車両保険の使用により支払われる保険金については、いわゆる分損の場合には修理費額から免責額を差し引いた額、全損の場合には保険価額が支払われることになります。このうち、全損は被保険自動車の損傷を修理することができない場合(物理的全損)や修理費が保険価額以上となる場合(経済的全損)を指し、分損は全損以外の場合を指すものとされています(なお、全損には、車両が盗難され、発見できなかった場合も含むものとされています)。
他方、車両保険を使用した場合、多くの損害保険会社では保険等級が1等級下がるものとして扱われており、これにより将来支払う保険料が増額されることになります。
ところで、ローン返済中の自動車が集中豪雨による浸水により修理不能状態となった場合、そのような状態の発生について自動車購入者に落ち度がなかったとしても、購入者はローン残額についての返済義務を免れないことになります。
特に残価設定型クレジット、いわゆる残クレについては、残価、つまりローン最終回時点での購入自動車の残存価値が設定されており、その額は比較的高額であることが多いといわれています。そのため、残クレで購入した自動車が走行不能となったために廃車手続を行おうとしても、そのためには、このような残価を含む多額の支払が必要となるといった事態が生じることがあります。
ただ、このような事態が生じても、車両保険を使用することが可能であれば、車両保険金をローン残額等の支払に充てるということも可能になります。
残クレは月々のローン支払額を抑えるために利用されており、その利用者には、保険料も節約するために、車両保険に加入していない方も少なからずいるようです。
ただ、先に述べたとおり、近時豪雨被害が多発しており、今年の夏だけでも、千葉県の他に、北陸地方でも多大な被害が生じています。このような状況からは、ローン、特に残クレを利用して自動車を購入する場合には、車両保険への加入につき積極的に検討した方が望ましいといえるでしょう。
なお、地震については、多くの車両保険では免責事由とされ、これによる損害は補償対象とされていません(ただし、いわゆる地震特約に加入していた場合には、地震により被保険車両が全損になった場合に一時金が支払われるものとされています)。
(2026年8月執筆)
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執筆者

志賀 晃しが あきら
弁護士(志賀総合法律事務所)
略歴・経歴
東京弁護士会所属
司法研修所第59期
日本弁護士連合会・民事司法改革総合推進本部幹事(損害賠償制度検討部会所属)
東京弁護士会・民事司法改革実現本部幹事(損害賠償増額検討部会所属)
東京弁護士会・不法行為法研究部部員
公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部・東京都26市役所交通事故相談担当
<主要著書>
『Q&Aと事例 物損交通事故 解決の実務』(編著)
『未成年者・精神障害者の監督者責任-Q&Aと事例-』(共著)
※令和元年12月時点
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