一般2013年07月29日 中国におけるネットビジネス事情 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:久保田祐佳
経済が発展してゆくに連れ、中国でもインターネットを利用する人が増えています。China Internet Network Information Center(CNNIC)が発表しているデータでは、2011年12月末時点での中国のインターネット・ユーザーは、5.13億人であり、2007年末にアメリカを抜いて以来、世界最多を維持しています。右肩上がりのインターネットの普及と歩調を合わせるように、ネットビジネス市場も成長を続けています。
こうした状況を受け、日本の企業も、中国に店舗を持たずに中国市場に参入する機会が得られるとして、中国のネットビジネス市場に高い関心を寄せています。そして実際、中国でのネットビジネスへの参入の動きが見られます。特に近時では、縮小する国内消費に危機感を募らせた小売やアパレル等が、電子商取引(EC)を介して中国への進出を図る例が見受けられます。経済産業省は、2011年6月に、2010年度の「電子商取引(EC)に関する市場調査」を発表しました。この調査によれば、日本の事業者から中国の消費者に向けたEC市場の規模は、2020年には最大1兆2600億円となり、2010年の13倍に拡大するとの見通しが示されています。
しかしながら、必ずしも良いことばかりではありません。
例えば、中国でのインターネットビジネスに参入した日本企業の例として、化粧品大手の資生堂があります。同社は、主要ブランドの中国向けネット販売サイトを開設しました。ですが、2012年9月におきた尖閣諸島問題により、日本は中国国民の反感を買い、資生堂商品は買い控えに遭いました。この影響はかなり大きかったそうです。これは、日中の外交関係が悪化すれば、政治とは無関係なはずの企業が、突然、中国国民からの攻撃の対象となりうること、つまりは政治的なリスクが中国進出には伴うのだと、分析する人もいます。このため、中国のみならず、他の国も進出先の選択肢として考える、「チャイナプラスワン」という方向性にシフトする企業も出てきています。
中国においては、インターネット・ユーザーが今後も増え続け、ネットビジネスの需要も拡大してゆくと思われますが、市場開拓に当たっては、既述の政治的リスクを初め、商品の輸送や代金回収、為替相場や頻繁に行われる法改正など、落とし穴となり得るリスクには細心の注意を払ってゆきたいものです。
(2013年7月執筆)
人気記事
人気商品
一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 全121記事
- 中国の離婚法制
- 大連訪問と中国の銀行更新手続き
- 中国における定年延長の決定
- 刑法改正のポイント
- 中国「会社法」改正のポイント
- 中国に銀行預金を残して死亡した場合の解約手続について
- 中国所在の不動産を巡る紛争と裁判管轄の問題
- 「老後は旅先で」~シニアの新しい生き方~
- 中国に出資しようとする外資企業に春が来た
- 「企業国外投資管理弁法」の概要
- 楽しさと便利さが、庶民の生活を作る。
- 中国会社法「司法解釈(4)」の要点解説
- 日本産業考察活動メモ
- 長江文明・インダス文明、再来の始まりを予感
- 中国国務院より「外資誘致20条の措置」が公布されました
- 中国の対日投資現状とトレンド(2)~中国の対日投資の論理とトレンド~
- 観光気分の危機管理
- 訴訟委任状に公証人の認証が必要か?
- 『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法』の解説
- 婚活は慎重に!とある中国人女性と日本人男性の事例
- 新旧<適格海外機関投資家国内証券投資の外国為替管理規定>の比較
- 中国では、今年から営業税から増値税に切り換え課税するようになりました。
- 土地使用権の期限切れ
- 過度な中国経済悲観論について思うこと
- 『中華人民共和国広告法(2015年改正)』の施行による外資企業への影響(後編)
- 203高地への道
- 中国大陸における債権回収事件(後編)
- 中国大陸における債権回収事件(前編)
- 訪日観光は平和の保障
- 大連事務所15周年&新首席代表披露パーティーを行いました
- 再び動き出した中国の環境公益訴訟
- 「国家憲法の日」の制定
- 中国独占禁止法
- 道路の渡り方にみる日中の比較
- 日本の弁護士と中国の律師がともに講師となってセミナー
- 日中平和友好条約締結35周年に思う
- 中国におけるネットビジネス事情
- 敦煌莫高窟観光の人数制限と完全予約制の実施
- 両国の震災支援を両国民の友好につなげたい
- 公共交通機関のサービス体制
- 「ありがとう」を頻繁に口にすることの効果
- 久しぶりの上海は穏やかだ
- 事業再編の意外な落とし穴
- 強く望まれる独禁法制の東アジア圏協力協定化
- いまこそ日本企業家の心意気を持って
- iPadに見る中国の商標権事情
- 人民元と円との直接取引がスタート
- 中・韓のFTA(自由貿易協定)交渉開始と日本
- 固定観念を打破し、異質を結びあわす閃きと気概
- 若い世代を引きつける京劇
- 大都市は交通インフラが課題だ!
- 杭州市政府の若手職員の心意気
- 13億4000万人を養う中国の国家戦略
- 「命の安全」を考える。
- 大連で労働法セミナーを開催しました
- 中国でも「禁煙」規定が発効
- 中国における震災報道から思う
- IT通信手段は、不可欠だ。
- 日本人は計画的?中国人は行きあたりばったり?
- 広州・北京に見るストライキ事情
- 商業賄賂で処罰
- 大連事務所は開設10周年を迎えました!
- 顔が見える交流
- 日本は人治、中国は法治?!
- 日本の公証人制度
- 充電スタンド建設の加速
- 上海の成熟した喧噪と法意識の違い
- 中国における日本人死刑執行の重み
- 中国の富裕層は日本経済の「救世主」か
- 日本に追いつき追い越せ/パートII
- 国際交流を望む中国研究者にとって日本は遠い国だ
- 「文化産業振興計画」の採択
- 国慶節に思う
- IC身分証明と在日外国人取締強化
- 「日本人は・・・・・」「中国人は・・・・・・・」
- 中国の携帯電話産業
- メラミン混入粉ミルク事件
- 大連市の公証人役場
- 東北アジア開発の動きと長春の律師
- 循環型経済促進法の制定
- 北京オリンピックと私たち
- 四川大震災に想う
- 日・中企業間の契約交渉の実例
- 東アジア共同体
- レジ袋の有料化
- 通訳の質について
- 「中国餃子バッシング」に思う
- 中国の休日
- インドを見てから、あらためて中国を見る
- 日中韓の国境は障害を乗り越え、確実に近くなっている。
- 北京市の自転車レンタル事業から中国の環境政策を見る
- 福田首相と日中友好
- 上海の空、東京の空 四日市公害裁判提訴(1967年)から40年後の今に想う
- 物権法の制定過程
- 司法より行政に権力がある
- 中国の『走出去』戦略を読む
- 中国の環境問題
- 中国のオーケストラ
- 春節
- 「いじめ」は共通語だ!
- 中国を見る眼
- 最高人民法院を訪問しました
- 機内食のコップ あっという間の進歩
- 冷静な眼と暖かい心
- 自主的な総合的力量を備える
- 宴席は丸か四角か
- 「十一五」規画始動!
- 依頼人の人権擁護
- 身の安全
- 中国で「勤勉さ」を学ぶ
- 203高地や旅順口などの戦跡を訪れて思う
- 「ソウルで味わった韓流の逞しさ」
- 中国と日本の立法・行政・司法
- くれぐれも御用心
- 海外旅行は、法リスクの宝庫だ。
- 互いの理解
- 信頼関係の形成に向けて
- 中国憲法における「改革・開放」路線
- 苦情処理センターの効用
- 信頼できる中国人パートナーを得る
- 外国への進出と契約
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.