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一般2006年06月12日 「十一五」規画始動! 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:中島宏治

1 「十一五」規画とは?
 2006年3月、全人代(全国人民代表大会)にて「第11次5カ年規画(計画)」が決定されました。この「第11次5カ年規画」のことを「十一五」規画といいます。
 第10次五カ年計画までは「計画」という用語を用いていましたが、第11次からは「規画」という用語に変わりました。これは、市場主義経済のもとで、計画(指令)から規画(ガイドライン)に変化したことを意味します。
 今回のコラムは、この「十一五」規画について、少しだけ触れてみます。

2 キーワードその1-科学的発展観-
 「科学的発展観」とは、経済建設を中心に据えるけれども、経済・政治・文化を全面的・協調的・持続的に発展させる科学的見方を指します。この考え方が根本的な思想で、「十一五」規画の随所にそれが現れてきます。例えば、都市・農村住民の所得格差を解消し、農村の都市化と住居・交通・教育・文化・衛生・環境を改善する提案をするなど(社会主義新農村の建設)、三農問題(農業・農村・農民)の解決に取り組むこと、省エネ・環境問題への取り組みなどが挙げられます。

3 キーワードその2-和諧社会-
 「和諧社会」とは、調和の取れた社会という意味です。従来の「先富論」から転換し、「共同富裕」(ともに豊かになる)を重視しています。背景に江沢民政権下で所得格差・地域格差が拡大し、社会不安の要因になりかねない水準に至ったという認識があります。
 和諧社会の目指す調和には、都市と農村の調和、産業構造の調和、地域の調和、所得格差の調和、経済と環境の調和など、様々な要素が含まれています。

4 「十一五」規画をどうみるか。
 中国は改革開放路線に転換してから、30年近くも10%弱の高成長を続けてきた世界でも稀な国です。他方で高成長に伴って様々な矛盾が顕在化していることも事実です。今回の「十一五」規画は、こうした矛盾を認め、これに対して正面から取り組んでいくという新たなステージに入ったことを示す象徴となるでしょう。
 ただし、矛盾を解消するのは容易ではありません。所得格差はなくなるどころか、現状維持が精一杯ではないかとの指摘もあります。胡主席-温首相体制の手腕が問われる5年となるでしょう。
 また、法律家の立場からいえば、法律はたくさんできたけれどもその運用を適正に行わないと「法の支配」にはなかなか近づかないという気持ちがあります。この点にも力を入れて欲しいと考えます。

5 日本の「規画」は?
 ところで、日本では政府の方針はどう示されているのでしょうか。日本だって所得格差は存在しますし、農業問題、教育問題、少子化問題、高齢者問題なども存在します。内閣が交代するたびに首相方針演説がされていますが、今ひとつ国民に浸透していないと思います。今秋のポスト小泉の演説に注目しましょう。
                        

(2006年6月執筆)

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