一般2010年10月01日 日本は人治、中国は法治?! 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:加藤洪太郎
この5月、上海万博の『アジア広場』で二日間にわたり催事を行うことができた。今回は、その主催にあたった著者の経験を通じての、自分なりの中国観 ? の変化。
5月29日には兄弟関係の太鼓のグループが、5月31日にはべートーヴェンの〝第九〟の合唱をはじめチェロやバイオリンの独奏を含むパフォーマンスをわが「瀬戸第九をうたう会」が、それぞれ披露して何れも万雷の喝采をあびた。
これらは2005年の愛知万博以来の音楽文化による日中文化交流の継承と発展の流れの中にあり、5年来の計画を実現したものであった。その様子は著者が編集するブログ(http://seto-shanhai.blogspot.com/)に写真入りで紹介。
ところで、この企画の当日近くなったある日、とある日本筋から問い合わせがあった。
「アジア広場での催事が出来る様になったのは、どうして ? 」
「強力な人脈があったのか?」
これは日本的発想からすれば当然の質問であり、著者でも自身が主催者として以下に紹介する経緯を直接体験していない立場にあれば、やはり同じ質問をしたに違いない。
で、答えは
「いえ、企画書を提出し、説明に上がって採用となっただけです。」
「特別の縁故は何もございませんでした。」
であった。実際、縁故はなかった。
われわれは実は、日本館での出演と、アジア広場での出演の双方の可能性を追っていた。日本館関係(日本)への名乗りと世博会事務協調局(中国)への直接の名乗りとを並行していたところ、結果的にスピードが速かったのが中国側だったのである。
提案書を起草して世博会全体をマネッジメントしている中国(上海)の事務局に提出しておいたところ、「詳しい資料が欲しい」との連絡が入った。こちらも行動は素早い。「では説明に参上します」とばかり上海に飛んだ。
応対に出てきたスタッフたちに会って驚いた。居並ぶ4~5名は何れも若者ばかり。彼らの上司(責任者)は海外出張で不在とのこと。
これまでに至る愛知万博以来の5年の経過と趣旨を説明した。すると、
「物語性がありますね。趣旨にも賛成です。進めましょう。」
「上司には私たちから説明します。やりましょう!」
と即断即決であった。
紹介者もない見ず知らずの者であっても、その資料と趣旨説明そしておそらくは人物、これらを若者のスタッフが把握して事実上自ら決断する。こちらも二足の草鞋の片足は弁護士職なので、プレゼンの主張・立証には意を尽くしたのではあるが、率直な感想が「これは法治だ!」であった。
逆に日本の方が「人治」的感覚になっているのではないか。
社会が成熟すると、分掌、調整、権威、前例、人脈、コネなども「成熟」。逆に発展途上にあれば、理念に適合すれば若者がどしどしと決めて進んでいく。と理解できた。今では「日本は人治、中国は法治」ではないか ? と、ふと思ったのは著者だけであろうか。
(2010年9月執筆)
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