一般2011年05月02日 中国における震災報道から思う 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:川口創
3月11日に発生した東日本大地震では多くの方々が命を落とし、また、4月に入っても16万人を越える方たちが避難所での生活を強いられています。
地震直後から、日本に対して中国を含む世界中から哀悼と同情の声が集まりました。
3月11日当時、中国では第11期全国人民代表会議第4会議が開催中で、メディアの関心も全人代が中心でした。
しかし、東日本大地震発生後は日本の地震が連日大きく取り上げられるようになり、地下鉄の電光掲示板でも、連日地震の情報が流れているようです。
地震発生直後は、地震の規模の大きさや甚大な被害を報じるとともに、著しい困難の中でも秩序が守られている日本人の態度を賞賛する記事が多く見られました。
また、市民の間でも被災者の方々への同情の声や支援の動きなどが出てきていますし、ネット上でも日本を支援しようという声が圧倒的に見えます。
こういった温かい支援の声を素直に受け止め、今後の日中関係につなげていければと願っています。
ただ、この間、メディアの関心が東京電力福島原発事故に比重が移ってきています。
3月末の時点での日本の情報については6割が原発、4割が被災地関係、という感じでしょうか(あくまで主観ですが)。
原子力発電所については、中国政府にとっても極めて重要な関心事です。中国では現在13基の原子力発電所が稼動中ですが、2020年までに新たに約60基(!)を増設する計画が進んでいます。この著しい原子力発電所増設計画に対して、今回の東電福島原発の事故を契機に市民の間からも不安の声が高まりました。そのため、中国政府は今後建設する原発の計画審査と承認を一時停止することを決定しました。
もっとも、今の中国は平均7%という経済成長率を設定しています。この経済成長を維持するためには原発増設政策が不可欠と中国政府は考えており、すぐに方針を転換するとは考えにくいと思います。
しかし、ドイツは早速原発政策の見直しに進んでいますし、日本も原発について根本的な見直しが求められると思います。
今は東電福島原発のことに関心が注がれていますが、膨大な原発を建設しようとしている隣国中国が今後どういった対応を取っていくのか、世界が注目しています。私たちにとってもとても重要な問題として、注視していきたいと思います。
(2011年4月執筆)
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