一般2005年07月06日 中国憲法における「改革・開放」路線 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:中島宏治
■ 改正される憲法
日本の現行憲法は、「改憲」か「護憲」か、はたまた「創憲」か・・と改憲論議が活発になっています。第二次世界大戦後制定された現行憲法は、まだ一度も改正されていません。
一方、中国の憲法はどうでしょうか。1949年の中華人民共和国成立後、5年を経て1954年にはじめて憲法が制定されました。その後、1975年、1978年、1982年(現行憲法)と4つの憲法が登場し、その後、1988年、1993年、1999年、2004年に憲法改正が行われています。このように、中国の憲法は頻繁に改正されていることが特徴です。そして、その改正された内容をみると、中国がいかに「改革・開放」路線をとっていったのかがよく分かります。
■ 1982年憲法(現行憲法)まで
1982年憲法(現行憲法)では、中国の根本制度と根本任務を規定し、基本原則と改革・開放の基本方針を確定しました。その第6条では、「中華人民共和国の社会主義経済制度の基礎は、生産手段の社会主義的公有制、すなわち、全人民所有制及び勤労大衆の集団所有制である。社会主義的公有制においては、人が人を搾取する制度は廃絶され、各人は能力に応じて働き、労働に応じて分配を受けるという原則が実行される。」と規定されています。
■ 1988年改正・1999年改正
1988年改正では、それまで憲法上の地位を与えられてこなかった私的資本が「法律の定める範囲内の個人経営経済及び私営経済などの非公有制経済は、社会主義経済の補充である」(第11条)と明文化されました。
更に、1999年改正では、私的資本の規定が社会主義市場経済の「補充」的役割から「重要な構成部分」に変更されました。
■ 2004年改正
2004年改正では、「公民の合法的な私有財産は侵されない」「国家は法律の規定に基づいて公民の私有財産権と相続権を保護する」(第13条)とされました。
■ 憲法改正の持つ意味
このように、中国では「社会主義的公有制」を維持しながらも、私的資本を社会主義経済の「重要な構成部分」と位置づけたうえ、公民の私有財産権と相続権を憲法上保障するに至りました。
中国ビジネスにおいては、中国が社会主義の国なのか資本主義の国なのかという議論はほとんど意味がありません。憲法改正の経緯を見て分かるとおり、憲法自体がその両者の側面をもっているからです。中国ビジネスの場面においては、常にそのことを念頭においておく必要があるでしょう。
(2005年6月執筆)
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