一般2018年06月14日 「老後は旅先で」~シニアの新しい生き方~ 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:稲田堅太郎
我国の平成29年版高齢社会白書(内閣府)によると65才以上の高齢者人口は3459万人であり総人口の占める割合(高齢化率)も27.3%に達していたものが、平成30年1月1日の時点の人口推計(総務省)によると総人口が1億2675.5万人で前年度より22.1万人減、内65才以上の高齢者は56.8万人増の3506.1万人となり高齢化率も27.7%に上昇しています。
人口減と高齢化率の上昇は我国にとって最重要課題となっています。
ところでお隣の中国でもご多分にもれず、60才以上の高齢者人口が2012年末で総人口の14.3%を占める1.94億人、2016年末には総人口の16.7%を占める2.3億人に達し、年を追うごとに高齢化率が増える傾向にあり、この5年間で高齢者介護施設の建設も急増し、昨年9月現在の総数は14.46万、2012年末の4.43万に比べて増加率が226%にも達しています。
この中国において、市民の経済レベルが向上するのに伴い「老後は旅先で」の考え方が最近の多くのシニアの新しい生き方になりつつあるようです。
シニアの生き方として農村観光、サービスアパートメント、余所のシニアコミュニティ、家の交換などさまざまな生き方があるものの共通点はシニアの旅行、生活、エンターテインメントなど楽しみ方を豊かにし、生活の質と幸福度指数を高めてくれることだと気づき始めているようです。
○ 定年まで二ヶ月ある55才のAさんは学生時代の友人達と一緒に「クルーズ15日間の旅」に出かけました。
○ 深セン市在住の65才のBさんの最初のイベントは広場ダンスの仲間数十人と一緒に地下鉄やバスに乗って郊外に遊びに行き持参した得意料理をお昼に皆で食べることだったが、「バス乗車カードで丸一日遊んでも20元(1元=約17円)もかからずとても楽しかったとの感想。
この成功体験の後、たびたび眺めのいい場所を求めて出歩き、ますます遠くへ足を向けるようになった。
○ 60才の女性Cさんは学生時代の友人4人と車で山西省太原を出発し、途中観光地に立寄りながら8日間かけて海南省三亜に到着した。定年退職後、三亜に家を購入し毎年冬になると「避寒」に出かけ、友人たちと共に三亜で一ヶ月滞在。
この様な動きに専門家は中国は高齢者人口増加のピークを迎えようとしているが、物質レベルと精神的な欲求が高まるにつれて「老後は旅先で」という生活スタイルが中国のシニアの新しいトレンドになりつつあると指摘している。
なお、最近の中国老齢科学研究センターが編集した「老齢青書」によると高齢者の60.8%が幸福と感じ、2000年と比べて12.0ポイント上昇したと人民日報が報じています。
(2018年6月執筆)
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