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その他2012年03月01日 若い世代を引きつける京劇 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:稲田堅太郎

 日本の伝統芸能である歌舞伎と同様に中国では200年余りの歴史のある京劇は中国の数多く存在する伝統劇の粋を集めた至宝であり伝統演劇を代表しているといえる。
 1800年代末から1950~60年代まで京劇は全盛期にあって中国のあらゆる世代から受け入れられて国劇と呼ばれるに至った。
 しかしながらテレビをはじめとする娯楽の多様化によって京劇も他の舞台芸術と同様に試練を受けるようになって劇場へ足を運ぶ人が大幅に減り、とりわけ若者たちの京劇離れが顕著となった。その結果、1980年代、1990年代生まれの「80後」「90後」の若い世代の時代には博物館入りになるのではないかと心配されるようになった。
 若者を劇場に呼び戻し、伝統の至宝である京劇を博物館入りさせないことが中国舞台芸術家たちの願いとなり、政府肝入りの努力目標が掲げられるようになった。
 即ち、文化省では京劇振興指導委員会と中国京劇芸術基金会を設置して若い俳優の発掘、伝統演目の復活をはかるとともに「国家重点京劇団保護・支援計画」を定め、11の国家重点劇団と17の省レベル重点劇団を支援し、新作京劇の創作、新人の育成をもすすめるようになった。
 さらには京劇の振興は優れた役者の育成に加えて観客を育てる必要があり「お客様あっての京劇であって客のいない中で、ひとり悦に入っているのでは駄目だ」と指摘する関係者もあって官民一体となった取組みは中国の教育機関も各大学内の伝統劇団体を支援したり伝統劇鑑賞カリキュラムの設置や伝統劇専門教育過程の設置をした大学も出てくるようになった。あるいは伝統劇の関係者も積極的に大学や高校に出かけて、「80後」「90後」世代を劇場に呼び戻そうと努めるようになった。
 「古典と現代は対立するものではなく、伝統と流行も矛盾するものではない。京劇は歴史のある独特の美しい芸術であるが、若者の心をとらえ現代の生活に溶け込むべきである」として、武漢大学芸術学科の易棟教諭は2002年に「京劇の歴史と美への誘い」「京劇昆劇芸術と詞曲鑑賞」などの公開講座を設けたところ、大盛況で、通路に立ってみている学生があふれるほどになったとのことである。
 易棟氏は「京劇が好きな学生は人数的にはまだ多いとはいえないが、京劇が微妙な立場におかれている今、京劇という宝を愛し、伝統を伝えようとしている若者もおり、なんと素晴らしく実に頼もしい」と述べている。
 昨年11月6日に武漢で開催された第6回中国京劇芸術祭において、「革命の赤い星、解放区人民が地主を倒す」という革命現代模範京劇「智取威虎山」の決め台詞に会場の学生から歓声が沸き、著名な京劇俳優で中国演劇家協会会長の尚長栄氏は「満点をつけよう。いや天狗になると困るから9.8点にしておこう」と拍手喝采をおくるとともに「伝統京劇の芸術について」と題する講演において、「かつては年寄りのものとみられていた京劇が、こうして再び若いファンを獲得したことに満足する」とともに「京劇は永遠に若者のものだ」と声を高め絶賛した。
 伝統芸能を若い世代に引継ぎ、発展させるには色んな立場の人々の熱意と協力が必要であることを実感した次第である。
 是非共、一度は京劇を鑑賞してみて下さい。

(2012年1月執筆)

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