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一般2008年03月05日 「中国餃子バッシング」に思う 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:川口創

 「中国製餃子から有機リン系薬物『メタミドホス』が検出された」として、中国製の食品に対する過剰なまでの「バッシング」がマスコミで展開されています。視聴者の側は、「中国製の食品は危険」と安易に鵜呑みにしてしまっているように思えます。
 現時点で、何ら原因が解明されていないわけですから、私もこの場で無責任なことを述べるわけにはいきません。しかし、以下の2点は確認しておきたいと思います。
 第1に、「中国製の食品は危険」という強烈なイメージが一気に作り上げらているけれど、その根拠ははっきりしない、ということです。
 今回の事件の一番最初は千葉市稲毛区の12月28日に起こっています。次が高砂市の1月5日、次が市川市の1月22日です。このように、発生時期は異なっています。しかし1月30日の報道では、一気に事件が起こったかのような形でニュースとなりました。その結果、ジェイティフーズが輸入した先で作られた冷凍食品の全てが直ちに店頭から姿を消し、その後すぐ、他の全ての中国製の冷凍食品までもが店頭から姿を消しました。
 ここで情報を確認してみます。兵庫県の中毒では餃子本体ではなくパッケージにメタミドホスが発見されています。さらに当初の報道では、包装に穴が開けられた形跡がないとしていましたが、2月1日、兵庫県警の科学捜査研究所の検査報告として、餃子のパッケージに長さ約3ミリの穴と、トレーにも約1ミリの穴が見つかったと報道されています。この情報からは、原因が中国の野菜にあるとは考えられません。包装段階、あるいは出荷後に混入された可能性が高いと考えるのが自然ではないでしょうか。
 しかし、残念なことに「中国製の食品は危険」という一気に作り上げられたイメージが日本全体を覆ってしまっていますが、その根拠は薄弱であると言えます。
 第2に、中国の工場は「ずさん」というイメージは正しくはないということです。
 私は中国の工場を視察したことは何度もありますが、私が視察した工場はどこも管理は極めて厳密で、衛生管理は完璧でした。働く労働者もみな優秀でした。「ずさんな工場」と感じた工場は少なくとも私が見た中では一つもありません。
 さらに、貿易実務の常識を確認しておきます。日本では、厳密な通関手続きがあり、中国の会社が作った加工食品をそのまま輸入することはできません。
 しかし、日本の会社が、中国の工場に実質的に関わり、かつ日本の農林水産省の認定を受け、自社の基準に基づいて製造した製品は、外国で作ったものも「日本製」と認められ、関税や免疫の問題は生じません。
 今回も、日本のジェイティフーズが天洋食品の管理者で、天洋食品の工場も農林水産省の厳しい認定をパスしています。実質的には日本の工場と同じ厳しい基準で餃子が作られているのです。また、当然農林水産省の係官が現地で調査もおこなっています。この工場で毒物が混入する可能性は、日本国内の工場で毒物が混入する可能性と変わりません。
 中国の工場は「ずさん」で、毒物混入もありうる、という考えは誤解です。中国に対する偏見が根底にあるとしたらなおのことですが、私たちにはもう少し冷静な姿勢が必要なのかもしれません。

(2008年2月執筆)

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