カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

一般2012年02月01日 大都市は交通インフラが課題だ! 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:菅原哲朗

 年の瀬も迫った2011年12月25日から急ぎの業務で北京市・天津市に出かけた。1年ぶりの北京だが慢性化した交通渋滞は変わらない。1週間をナンバープレートの偶数車と奇数車で自動車交通を制限しても改善はおぼつかない。ガイドも携帯電話のやり取りで、宴会場で待つ提携先に待ち合わせ時間を告げる。
 2011年9月7日、中秋の名月の時期に大連市に行ったときも同様だったが、交通ラッシュはすざまじい。平日は朝夕の通勤ラッシュだけでなく、昼の時間も大連賓館前のロータリーは交通渋滞だ。
 試しに大連では1元を払って二階建てバスに乗ったが、これも混み合っている。いまダイナマイトで地下の岩盤を破壊しつつ、突貫工事で2015年開業を目指す。地下鉄ができると庶民の足となるが、聞くところによると地下鉄工事で何人も作業員が死亡していると言う。法律事務所のある中山広場の工事現場もやっと地下鉄工事が終わり、ひどかった発破の衝撃と音も遠くから鳴り響いてくる。

 歴史的な町並みを誇る大連の道路は車道だけでなく、歩道も広い。歩道に縦に駐車できるスペースがある。しかし、今すべての歩道は駐車場化している。個人が豊かになりマイカー通勤が当たり前の近代都市大連は、ローンで庶民が気楽に車を購入できる。
 しかも、日本のように車庫証明がいらないので、車は売れ、ローン漬けの「車奴」という新しい言葉が生まれている。庶民は住宅を購入するも、財産形成のために2戸、3戸と金を貯めてマンションを買う。ローン漬けの債務者を「房奴」という。苦笑しながらついでに「車奴」か?と聞く、という。
 中国の土地は国有地だ。当然、車道も歩道も国有地だ。大連の大通りはほとんどが駐車禁止で、車道に駐車すると、道路交通法違反で罰金が取られるので、庶民は歩道に乗り上げて駐車する。歩道なら駐車違反はなく、いまや歩道が駐車場と化している。歩車道を区別する路肩の段差を低く改造し、大連は北京・上海のような大都市同様に車優先の社会を作ってきた。
 従って、歩行者はずらっと駐車した車両で歩道を歩けないため、やむなく車道に出て走る車の脇を歩行するという、矛盾した行動をとらざるを得ない。
 大連市当局のいい分は中国的なブラックユーモアで、駐車場は増やせないし、止まった自動車は自由に変形させられない。しかし人間は車道でも自由に行動して車を避けるので、融通が利くとの交通ルールを曲げた判断だ。

 提携先の天津第一中心病院の院長は1992年に日本に留学し、博士号も取得した臓器移植の専門家だ。彼曰く、大連と同様に天津市内には駐車場が少ない。市民が持つ車は80万台だが、駐車場は3万台しかなく、交通システムが間違っているという。
 病院も同じだ。天津では多くの患者が並んでおり、医師は毎日忙しい。日本では病院管理を優秀な事務職がしているのを見るにつけ、中国では大病院の効率が悪い、という。まさに中国では自動車と同じく、「ハード」を増やすことが優先で、重傷の患者を速やかに治療する「ソフト」のシステム・制度が問題だという。中国は急ピッチの経済成長優先で交通・物流インフラは考慮外だったので、是非とも病院経営で日本のソフトパワーの質を学びたい、と熱心に語っていた。
 もちろん、中国は日々経済が発展している。様々な中国人のノウハウも中国流だ。
 例えば、大連の銀行窓口の一角に、人民弊の束を積み上げ、「公認(?)の闇両替商」が一人陣取っている。銀行の中なら警備員もおり、両替商も安心だ。客から外貨を正規為替レートの約2.5%高で両替する。客に渡す人民弊の現金は、銀行の窓口係が偽札か否か、検査して、両替商に帯封付きで渡す。客は両替屋から真札を受け取る。間違いがなく、かつ換金率が良いので留学生が外国に出発する時期には、おおいに賑わうと聞く。数百万円単位でも簡単に両替する。中国人でなく外国人でも買い物して余った人民弊を再度外貨に戻さないなら、銀行やホテルで両替しなくても不都合はない。日本人には理解できないが、きっと銀行にとっても「公認(?)の闇両替商」は多額の預金をする上得意客で、持ちつ持たれつの民間の知恵には感心する。

(2012年1月執筆)

一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 全115記事

  1. 中国所在の不動産を巡る紛争と裁判管轄の問題
  2. 「老後は旅先で」~シニアの新しい生き方~
  3. 中国に出資しようとする外資企業に春が来た
  4. 「企業国外投資管理弁法」の概要
  5. 楽しさと便利さが、庶民の生活を作る。
  6. 中国会社法「司法解釈(4)」の要点解説
  7. 日本産業考察活動メモ
  8. 長江文明・インダス文明、再来の始まりを予感
  9. 中国国務院より「外資誘致20条の措置」が公布されました
  10. 中国の対日投資現状とトレンド(2)~中国の対日投資の論理とトレンド~
  11. 観光気分の危機管理
  12. 訴訟委任状に公証人の認証が必要か?
  13. 『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法』の解説
  14. 婚活は慎重に!とある中国人女性と日本人男性の事例
  15. 新旧<適格海外機関投資家国内証券投資の外国為替管理規定>の比較
  16. 中国では、今年から営業税から増値税に切り換え課税するようになりました。
  17. 土地使用権の期限切れ
  18. 過度な中国経済悲観論について思うこと
  19. 『中華人民共和国広告法(2015年改正)』の施行による外資企業への影響(後編)
  20. 203高地への道
  21. 中国大陸における債権回収事件(後編)
  22. 中国大陸における債権回収事件(前編)
  23. 訪日観光は平和の保障
  24. 大連事務所15周年&新首席代表披露パーティーを行いました
  25. 再び動き出した中国の環境公益訴訟
  26. 「国家憲法の日」の制定
  27. 中国独占禁止法
  28. 道路の渡り方にみる日中の比較
  29. 日本の弁護士と中国の律師がともに講師となってセミナー
  30. 日中平和友好条約締結35周年に思う
  31. 中国におけるネットビジネス事情
  32. 敦煌莫高窟観光の人数制限と完全予約制の実施
  33. 両国の震災支援を両国民の友好につなげたい
  34. 公共交通機関のサービス体制
  35. 「ありがとう」を頻繁に口にすることの効果
  36. 久しぶりの上海は穏やかだ
  37. 事業再編の意外な落とし穴
  38. 強く望まれる独禁法制の東アジア圏協力協定化
  39. いまこそ日本企業家の心意気を持って
  40. iPadに見る中国の商標権事情
  41. 人民元と円との直接取引がスタート
  42. 中・韓のFTA(自由貿易協定)交渉開始と日本
  43. 固定観念を打破し、異質を結びあわす閃きと気概
  44. 若い世代を引きつける京劇
  45. 大都市は交通インフラが課題だ!
  46. 杭州市政府の若手職員の心意気
  47. 13億4000万人を養う中国の国家戦略
  48. 「命の安全」を考える。
  49. 大連で労働法セミナーを開催しました
  50. 中国でも「禁煙」規定が発効
  51. 中国における震災報道から思う
  52. IT通信手段は、不可欠だ。
  53. 日本人は計画的?中国人は行きあたりばったり?
  54. 広州・北京に見るストライキ事情
  55. 商業賄賂で処罰
  56. 大連事務所は開設10周年を迎えました!
  57. 顔が見える交流
  58. 日本は人治、中国は法治?!
  59. 日本の公証人制度
  60. 充電スタンド建設の加速
  61. 上海の成熟した喧噪と法意識の違い
  62. 中国における日本人死刑執行の重み
  63. 中国の富裕層は日本経済の「救世主」か
  64. 日本に追いつき追い越せ/パートII
  65. 国際交流を望む中国研究者にとって日本は遠い国だ
  66. 「文化産業振興計画」の採択
  67. 国慶節に思う
  68. IC身分証明と在日外国人取締強化
  69. 「日本人は・・・・・」「中国人は・・・・・・・」
  70. 中国の携帯電話産業
  71. メラミン混入粉ミルク事件
  72. 大連市の公証人役場
  73. 東北アジア開発の動きと長春の律師
  74. 循環型経済促進法の制定
  75. 北京オリンピックと私たち
  76. 四川大震災に想う
  77. 日・中企業間の契約交渉の実例
  78. 東アジア共同体
  79. レジ袋の有料化
  80. 通訳の質について
  81. 「中国餃子バッシング」に思う
  82. 中国の休日
  83. インドを見てから、あらためて中国を見る
  84. 日中韓の国境は障害を乗り越え、確実に近くなっている。
  85. 北京市の自転車レンタル事業から中国の環境政策を見る
  86. 福田首相と日中友好
  87. 上海の空、東京の空 四日市公害裁判提訴(1967年)から40年後の今に想う
  88. 物権法の制定過程
  89. 司法より行政に権力がある
  90. 中国の『走出去』戦略を読む
  91. 中国の環境問題
  92. 中国のオーケストラ
  93. 春節
  94. 「いじめ」は共通語だ!
  95. 中国を見る眼
  96. 最高人民法院を訪問しました
  97. 機内食のコップ あっという間の進歩
  98. 冷静な眼と暖かい心
  99. 自主的な総合的力量を備える
  100. 宴席は丸か四角か
  101. 「十一五」規画始動!
  102. 依頼人の人権擁護
  103. 身の安全
  104. 中国で「勤勉さ」を学ぶ
  105. 203高地や旅順口などの戦跡を訪れて思う
  106. 「ソウルで味わった韓流の逞しさ」
  107. 中国と日本の立法・行政・司法
  108. くれぐれも御用心
  109. 海外旅行は、法リスクの宝庫だ。
  110. 互いの理解
  111. 信頼関係の形成に向けて
  112. 中国憲法における「改革・開放」路線
  113. 苦情処理センターの効用
  114. 信頼できる中国人パートナーを得る
  115. 外国への進出と契約
  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索