一般2009年05月07日 中国の携帯電話産業 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:川口創
2009年3月、中国移動通信(チャイナ・モバイル)は、2008年の業績を発表した。純利益が前年比の29.6パーセント増の1,127億9300万元(約1兆5700億円)に及び、通信業の純利益額ではイギリスボーダフォンを抜き、世界1位の業績となった。
08年末時点の同社のユーザーは前年末比23.8パーセント増の4億5700万人とのことである。月あたり、平均して730万人増加した計算になる。
あまりにも、市場規模が違いすぎて、唖然とするばかりである。
中国では1987年携帯電話サービスが開始され、1997年時点でもユーザーは1323万と低迷していたそうである。
しかし、その後の4年で一気にユーザーが拡大し、2001年には中国の携帯電話ユーザーは世界最大となった。ここでノキアなども一気に事業参入をしていったようである。
2003年には、固定電話のユーザー数を携帯電話ユーザー数がついに上回った。
携帯電話の爆発的な普及の背景には、膨大な固定電話の整備を図るよりも、携帯電話を普及させた方がインフラの点で容易だという技術的な面も多分にあるようであるが、それにしてもこの普及のスピードには驚くばかりである。
もっとも、その普及にも格差が生じているようで、北京などの大都市圏や沿岸地域の携帯電話の普及率は極めて高いが、他の経済格差同様、内陸部の携帯電話普及率が低いようであり、この点が課題のようである。
個人的な体験になるが、私が初めて中国に行ったのは、大学の時の1992年のことである。当時は、例えば南京大学内の宿舎から上海に電話をするときにも、交換台を通した電話だったと記憶しており、相手に電話がつながるのに結構待たされた記憶だ。しかも、多くの家庭には固定電話すらないという状況であった。
当時はそれが普通で、特に不便とも思わなかったし、むしろあわただしくしている日本での生活を見つめ直す良い機会でもあった。
それが2008年末の時点で携帯電話のユーザーが4億5700万人とは驚きだ。確かに、中国では街ゆく人達は皆携帯で話をしている。そういう風景が普通になった。今はあわただしい空気が中国の街中にあふれている。
中国のかつてのゆったりした「リズム」が好きだった私としては、ちょっぴり残念な気持ちである。
(2009年3月執筆)
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