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一般2018年05月01日 楽しさと便利さが、庶民の生活を作る。 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:菅原哲朗

1、上海の二つのテーマパーク
 中国国内ではテーマパークブームだと聞いた。中国のネットで最も人気を集めたテーマパークは日本大阪の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」だという。

 2017年11月9日(木)、上海ディズニーランドに行ってきた。
 戦前の英米仏租借地たる魔都上海・現代は黄浦江対岸の東方明珠電視塔・上海中心大厦(上海タワー)・浦東新区超高層ビル群を見上げるように上海は外国の異文化が上陸する先端都市だ。リニアモーターカー(上海トランスラピッド)の走る上海浦東国際空港近くに2016年6月ディズニーランドが開園されたと聞いて中国人のテーマーパーク熱を知りたくなった。
 旧市街地上海虹橋から地下鉄11号線に乗車約1時間半、「迪士尼駅」(ディズニー駅)に下車した。青空だった。入門ゲートで荷物検査を受け園内を散策した。開園後1年半たったが、平日なのでアトラクションも未だ未だ混雑するような集客力はなく、若者集団より家族連れが多いと感じた。子どもはシャボン玉の多量射出のおもちゃ、若者のカップルはディズニーパークの象徴的建物である城・海賊船スポットでの「自撮り」に夢中だ。
 父、母、妹、5才の甥をつれてカリフォルニア州アナハイムのディズニーリゾートに行ったこと。東京ディズニーランドが開園した時に子連れで見てきたことを思い出した。三年前、弁護士会互助ツアーでディズニーシーを見たときは、時代の流れか(?)ディズニーファッションに着飾った熱狂的なディズニーファンの女子中高生の楽しい笑顔に感嘆した。

 2017年11月11日(土)烏鎮(うちん)に行ってきた。土曜日だったが乗用車で上海市街から高速道をひたすら走った。
 テーマパーク烏鎮は、「アジアのヴェネツィア」ともいわれ、千年以上もの歴史のある古い街で、唐代から運河を商業船が行き来した地域だ。上海、杭州、蘇州を結ぶ三角形の真ん中あたり交通の要衝で、上海から南西に約140km、杭州から北東に約80km、浙江省桐郷市にある。江蘇省、浙江省、安徽省など国内旅行者がバスを連ねて押し寄せる水郷テーマパークだ。
 中国政府のIT政策を支える世界インターネット大会の永久開催施設であるインターネット国際会展センターがあり、新旧建物が歴史ある環境に配慮して混在している。第3回世界インターネット大会は2016年11月ここ烏鎮で開かれた。
 景杭大運河は世界でも早く開削された北京・上海・南京・杭州へ長い人工の河だ。板塀に彫刻した序文(日本語翻訳)が掲げてあり「天下の船舶の集まるところ、常に万余の船が運河に満ち、声は喧しく、半天下の財賦は悉くこの道より入る。河上の船の往来は千里も絶えない」と記載されている。
 「烏鎮西柵景区」は河川が走り、沼や湖も点在するリゾート水郷地帯である。桟橋に到着して、タイムスリップした江南水郷の風情を見る。烏鎮の古色蒼然とした町並み、運河沿いの古民家をつなぐ小さな橋をくぐって、水路を手こぎの木工船(遊覧船)でゆったりと進む。小船に乗った我々は、橋上に押し寄せた中国人観光客にとって絶好の被写体だった。

2、QRコードは現金を駆逐するか?
 中国では財布レスが進んでいる。街中の小さな店舗でもQRコードをかざして電子マネーでの支払いが当たり前で、街中でほとんど現金を使わなくなった。
 中国ではコンビニ・スーパーマーケットやレストランの支払い、ネット送金、携帯電話支払い、地下鉄・バス・タクシー代金の公共料金の支払いは、現金でなくスマホの電子マネー決済アプリ「支付宝」(Alipay:アリペイ:2004年12月にサービス開始)や「微信支付」(WeChat Pay:ウィーチャットペイ)で支払うことが当然となっている。セキュリティーの関係で、日本で爆買いの中国人観光客はクレジットカードが使えず、「銀聯デビットカード」を数百万円の単位で使い、中国政府は規制に入った。
 FinTech の潮流の中で、「QRコード+スマホアプリ」の普及ですでに中国のモバイル電子決済市場は5.5兆ドル(約610兆円)に及び、米国の50倍以上の規模になっているとの調査報道もある。「モバイル決済は先進国よりも、むしろ、新興国や途上国で急速な広がりをみせている事例が多い。」(注)
 金融運用、航空チケット、映画予約、病院の予約、海外送金など中国人の若者は、日常生活で必要な様々なサービス代金をスマートフォンで支払い、スマホを駆使できない中国人老人はタクシーを呼びにくくなったと聞いた。

 11月8日に上海に入国すると、東京から持参したiPhone Xに「支付宝」と「微信支付」のソフトをインストールした。上海の銀行窓口で個人名義の銀行口座と電子マネー決済の紐付け手続きして、まず、試みに大連在住の中国人秘書宛てに私の中国専用携帯電話の残代金が少なくなっているので、試しに送金した。確認をさせたら秘書は先生もスマホ使えるのですねと話し、直ちにメールの着金返信が入り、また送金手数料は極めて安い。
 支付宝の使い始めで、上海ディズニーランドで屋台のアイスクリームを買った。老上海とディズニーの雰囲気が融合したディズニー外の「WORLD DISNEY(迪士尼世界商店)」で土産のグッズをQRコードを見せて購入した。
 なぜ、電子マネーが中国で急速に普及したのか?中国の偽札横行事情があると聞いた。日本では独立行政法人造幣局の紙幣印刷技術の進化で、偽札にお目に掛からず、現金を信用する。しかし、中国では100元の偽札は当たり前で、偽札判別機器が進化した。ここに日本人と中国人の物品交換手段たる紙幣に対する信用が違う。

3、「一帯一路」という言葉が今の流行だ。
 「一帯一路」は中国政府が2013年に打ち出した海と陸から中国と欧州とを結ぶ「シルクロード経済圏構想」だ。平和な時代は大きな経済の流れに乗って「楽しさと便利さが、庶民の生活を作る」ものだ。
 日中間の文化交流は、いつも時々の政治と経済のなかで良きも悪きも翻弄される。我々の法律家文化交流は時代の流れを見据えて着実に「法治」を形成すべきだ、と実感した。

<注>
「モバイル決済の現状と課題」(決済システムレポート別冊シリーズ)発行:日本銀行決済機構局2017 年 6 月:(https://www.boj.or.jp/research/brp/psr/psrb170620.htm/
「決済システムレポート別冊シリーズ」は、決済システムを巡る特定のテーマについて、掘り下げた調査分析を行うものである。本別冊では携帯電話やスマートフォンを用いる「モバイル決済」、とりわけ、店頭でのモバイル決済の動向について概観する。


(2018年1月執筆)

一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 全115記事

  1. 中国所在の不動産を巡る紛争と裁判管轄の問題
  2. 「老後は旅先で」~シニアの新しい生き方~
  3. 中国に出資しようとする外資企業に春が来た
  4. 「企業国外投資管理弁法」の概要
  5. 楽しさと便利さが、庶民の生活を作る。
  6. 中国会社法「司法解釈(4)」の要点解説
  7. 日本産業考察活動メモ
  8. 長江文明・インダス文明、再来の始まりを予感
  9. 中国国務院より「外資誘致20条の措置」が公布されました
  10. 中国の対日投資現状とトレンド(2)~中国の対日投資の論理とトレンド~
  11. 観光気分の危機管理
  12. 訴訟委任状に公証人の認証が必要か?
  13. 『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法』の解説
  14. 婚活は慎重に!とある中国人女性と日本人男性の事例
  15. 新旧<適格海外機関投資家国内証券投資の外国為替管理規定>の比較
  16. 中国では、今年から営業税から増値税に切り換え課税するようになりました。
  17. 土地使用権の期限切れ
  18. 過度な中国経済悲観論について思うこと
  19. 『中華人民共和国広告法(2015年改正)』の施行による外資企業への影響(後編)
  20. 203高地への道
  21. 中国大陸における債権回収事件(後編)
  22. 中国大陸における債権回収事件(前編)
  23. 訪日観光は平和の保障
  24. 大連事務所15周年&新首席代表披露パーティーを行いました
  25. 再び動き出した中国の環境公益訴訟
  26. 「国家憲法の日」の制定
  27. 中国独占禁止法
  28. 道路の渡り方にみる日中の比較
  29. 日本の弁護士と中国の律師がともに講師となってセミナー
  30. 日中平和友好条約締結35周年に思う
  31. 中国におけるネットビジネス事情
  32. 敦煌莫高窟観光の人数制限と完全予約制の実施
  33. 両国の震災支援を両国民の友好につなげたい
  34. 公共交通機関のサービス体制
  35. 「ありがとう」を頻繁に口にすることの効果
  36. 久しぶりの上海は穏やかだ
  37. 事業再編の意外な落とし穴
  38. 強く望まれる独禁法制の東アジア圏協力協定化
  39. いまこそ日本企業家の心意気を持って
  40. iPadに見る中国の商標権事情
  41. 人民元と円との直接取引がスタート
  42. 中・韓のFTA(自由貿易協定)交渉開始と日本
  43. 固定観念を打破し、異質を結びあわす閃きと気概
  44. 若い世代を引きつける京劇
  45. 大都市は交通インフラが課題だ!
  46. 杭州市政府の若手職員の心意気
  47. 13億4000万人を養う中国の国家戦略
  48. 「命の安全」を考える。
  49. 大連で労働法セミナーを開催しました
  50. 中国でも「禁煙」規定が発効
  51. 中国における震災報道から思う
  52. IT通信手段は、不可欠だ。
  53. 日本人は計画的?中国人は行きあたりばったり?
  54. 広州・北京に見るストライキ事情
  55. 商業賄賂で処罰
  56. 大連事務所は開設10周年を迎えました!
  57. 顔が見える交流
  58. 日本は人治、中国は法治?!
  59. 日本の公証人制度
  60. 充電スタンド建設の加速
  61. 上海の成熟した喧噪と法意識の違い
  62. 中国における日本人死刑執行の重み
  63. 中国の富裕層は日本経済の「救世主」か
  64. 日本に追いつき追い越せ/パートII
  65. 国際交流を望む中国研究者にとって日本は遠い国だ
  66. 「文化産業振興計画」の採択
  67. 国慶節に思う
  68. IC身分証明と在日外国人取締強化
  69. 「日本人は・・・・・」「中国人は・・・・・・・」
  70. 中国の携帯電話産業
  71. メラミン混入粉ミルク事件
  72. 大連市の公証人役場
  73. 東北アジア開発の動きと長春の律師
  74. 循環型経済促進法の制定
  75. 北京オリンピックと私たち
  76. 四川大震災に想う
  77. 日・中企業間の契約交渉の実例
  78. 東アジア共同体
  79. レジ袋の有料化
  80. 通訳の質について
  81. 「中国餃子バッシング」に思う
  82. 中国の休日
  83. インドを見てから、あらためて中国を見る
  84. 日中韓の国境は障害を乗り越え、確実に近くなっている。
  85. 北京市の自転車レンタル事業から中国の環境政策を見る
  86. 福田首相と日中友好
  87. 上海の空、東京の空 四日市公害裁判提訴(1967年)から40年後の今に想う
  88. 物権法の制定過程
  89. 司法より行政に権力がある
  90. 中国の『走出去』戦略を読む
  91. 中国の環境問題
  92. 中国のオーケストラ
  93. 春節
  94. 「いじめ」は共通語だ!
  95. 中国を見る眼
  96. 最高人民法院を訪問しました
  97. 機内食のコップ あっという間の進歩
  98. 冷静な眼と暖かい心
  99. 自主的な総合的力量を備える
  100. 宴席は丸か四角か
  101. 「十一五」規画始動!
  102. 依頼人の人権擁護
  103. 身の安全
  104. 中国で「勤勉さ」を学ぶ
  105. 203高地や旅順口などの戦跡を訪れて思う
  106. 「ソウルで味わった韓流の逞しさ」
  107. 中国と日本の立法・行政・司法
  108. くれぐれも御用心
  109. 海外旅行は、法リスクの宝庫だ。
  110. 互いの理解
  111. 信頼関係の形成に向けて
  112. 中国憲法における「改革・開放」路線
  113. 苦情処理センターの効用
  114. 信頼できる中国人パートナーを得る
  115. 外国への進出と契約
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