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その他2016年06月01日 過度な中国経済悲観論について思うこと 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:川口創

 日本の本屋に行くと、「中国経済破綻」など、中国経済に対する悲観的な書籍が多く売られています。「中国バブル崩壊か」という論調も目立ちます。私は大学院(京大)で地域経済を学んだ経験から、一国の経済は国内の地域経済の積み重ねでもあることを実感しています。とりわけ中国は、広大な国土と多くの人口を抱えており、「中国」という大きな単位だけの分析では不正確な部分があるのではないでしょうか。
 例えば、当事務所の夏目弁護士が首席代表を務める大連事務所がある大連のような、いわゆる沿岸部、都市部と、内陸部、農村部との経済構造は異なります。
 改革開放以来の中国経済を牽引してきたのは沿岸部、都市部ですが、近年、その成長率は相対的に低くなっている一方、内陸部や農村部など、地方の成長率は高い数値で推移してきています。
 例えば、2000年に1人あたりGDPが最も高かった上海市と最も低かった貴州省との間には、10.9倍もの格差がありましたが、2014年の統計では、その差は3.4倍にまで縮小してきており、内陸部の消費の増加量はめざましいものがあります。中国の地域経済の底上げはこれからも進んでいくことは間違いないでしょう。
 このことは、沿岸大都市がターゲットであった商品やサービスが、中国全土に拡大していくということです。ですから、これまで大都市にターゲットを置いていた事業がその周辺都市や内陸部まで事業機会が広がりつつあると言えます。
 中国全体として見た場合、たしかに2015年に入ってから、中国の景気減速感は強くなりました。2015年3月の第12期全国人民代表大会(全人代)第3回会議で、2015年の経済成長率の目標を7%程度に引き下げる政府発表があり、中国政府も、高成長時代が終焉を迎えたことは明確に意識しています。
 同時に、全人代の政府報告では、従来型の高成長から中成長への構造改革を「新常態(ニューノーマル)」と称して打ち出し、持続可能な発展を目指す経済政策に大きく転換しました。
 中国の経済を分析するにあたっては、こうした中国全体の経済構造の変化と、中国各地のそれぞれの地域経済の拡大双方を見ていく必要があると思います。
 なお、2016年の現時点でも、有効求人倍率やインフレ率は安定しており、不動産価格についても市場崩壊するような事態は生じておらず、「バブル崩壊」の前兆があるとは必ずしも言えません。
 中国経済が不透明感を増していることは否めませんが、過度な中国経済悲観論に依拠することは、決して日本企業にとっても、また、日本や中国双方の市民にとっても得策とは言えないのではないでしょうか。
 事業のリスクを回避することはもちろん大事ですが、「中国市場破綻」などといった過度な悲観論に振り回され、せっかくのビジネスチャンスを逃すことがないようにしていきたいものです。
 中国の全体の経済構造の大きな変化と、個別の地域経済の動向を見極めながら、事業拡大を勝ち取っていきたいものだと思います。

(2016年5月執筆)

一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 全115記事

  1. 中国所在の不動産を巡る紛争と裁判管轄の問題
  2. 「老後は旅先で」~シニアの新しい生き方~
  3. 中国に出資しようとする外資企業に春が来た
  4. 「企業国外投資管理弁法」の概要
  5. 楽しさと便利さが、庶民の生活を作る。
  6. 中国会社法「司法解釈(4)」の要点解説
  7. 日本産業考察活動メモ
  8. 長江文明・インダス文明、再来の始まりを予感
  9. 中国国務院より「外資誘致20条の措置」が公布されました
  10. 中国の対日投資現状とトレンド(2)~中国の対日投資の論理とトレンド~
  11. 観光気分の危機管理
  12. 訴訟委任状に公証人の認証が必要か?
  13. 『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法』の解説
  14. 婚活は慎重に!とある中国人女性と日本人男性の事例
  15. 新旧<適格海外機関投資家国内証券投資の外国為替管理規定>の比較
  16. 中国では、今年から営業税から増値税に切り換え課税するようになりました。
  17. 土地使用権の期限切れ
  18. 過度な中国経済悲観論について思うこと
  19. 『中華人民共和国広告法(2015年改正)』の施行による外資企業への影響(後編)
  20. 203高地への道
  21. 中国大陸における債権回収事件(後編)
  22. 中国大陸における債権回収事件(前編)
  23. 訪日観光は平和の保障
  24. 大連事務所15周年&新首席代表披露パーティーを行いました
  25. 再び動き出した中国の環境公益訴訟
  26. 「国家憲法の日」の制定
  27. 中国独占禁止法
  28. 道路の渡り方にみる日中の比較
  29. 日本の弁護士と中国の律師がともに講師となってセミナー
  30. 日中平和友好条約締結35周年に思う
  31. 中国におけるネットビジネス事情
  32. 敦煌莫高窟観光の人数制限と完全予約制の実施
  33. 両国の震災支援を両国民の友好につなげたい
  34. 公共交通機関のサービス体制
  35. 「ありがとう」を頻繁に口にすることの効果
  36. 久しぶりの上海は穏やかだ
  37. 事業再編の意外な落とし穴
  38. 強く望まれる独禁法制の東アジア圏協力協定化
  39. いまこそ日本企業家の心意気を持って
  40. iPadに見る中国の商標権事情
  41. 人民元と円との直接取引がスタート
  42. 中・韓のFTA(自由貿易協定)交渉開始と日本
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  44. 若い世代を引きつける京劇
  45. 大都市は交通インフラが課題だ!
  46. 杭州市政府の若手職員の心意気
  47. 13億4000万人を養う中国の国家戦略
  48. 「命の安全」を考える。
  49. 大連で労働法セミナーを開催しました
  50. 中国でも「禁煙」規定が発効
  51. 中国における震災報道から思う
  52. IT通信手段は、不可欠だ。
  53. 日本人は計画的?中国人は行きあたりばったり?
  54. 広州・北京に見るストライキ事情
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  56. 大連事務所は開設10周年を迎えました!
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  58. 日本は人治、中国は法治?!
  59. 日本の公証人制度
  60. 充電スタンド建設の加速
  61. 上海の成熟した喧噪と法意識の違い
  62. 中国における日本人死刑執行の重み
  63. 中国の富裕層は日本経済の「救世主」か
  64. 日本に追いつき追い越せ/パートII
  65. 国際交流を望む中国研究者にとって日本は遠い国だ
  66. 「文化産業振興計画」の採択
  67. 国慶節に思う
  68. IC身分証明と在日外国人取締強化
  69. 「日本人は・・・・・」「中国人は・・・・・・・」
  70. 中国の携帯電話産業
  71. メラミン混入粉ミルク事件
  72. 大連市の公証人役場
  73. 東北アジア開発の動きと長春の律師
  74. 循環型経済促進法の制定
  75. 北京オリンピックと私たち
  76. 四川大震災に想う
  77. 日・中企業間の契約交渉の実例
  78. 東アジア共同体
  79. レジ袋の有料化
  80. 通訳の質について
  81. 「中国餃子バッシング」に思う
  82. 中国の休日
  83. インドを見てから、あらためて中国を見る
  84. 日中韓の国境は障害を乗り越え、確実に近くなっている。
  85. 北京市の自転車レンタル事業から中国の環境政策を見る
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  87. 上海の空、東京の空 四日市公害裁判提訴(1967年)から40年後の今に想う
  88. 物権法の制定過程
  89. 司法より行政に権力がある
  90. 中国の『走出去』戦略を読む
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  93. 春節
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  96. 最高人民法院を訪問しました
  97. 機内食のコップ あっという間の進歩
  98. 冷静な眼と暖かい心
  99. 自主的な総合的力量を備える
  100. 宴席は丸か四角か
  101. 「十一五」規画始動!
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  104. 中国で「勤勉さ」を学ぶ
  105. 203高地や旅順口などの戦跡を訪れて思う
  106. 「ソウルで味わった韓流の逞しさ」
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  108. くれぐれも御用心
  109. 海外旅行は、法リスクの宝庫だ。
  110. 互いの理解
  111. 信頼関係の形成に向けて
  112. 中国憲法における「改革・開放」路線
  113. 苦情処理センターの効用
  114. 信頼できる中国人パートナーを得る
  115. 外国への進出と契約
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