カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

一般2024年10月30日 中国における定年延長の決定 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:稲田堅太郎

 中国全国人民代表大会(日本の国会に相当)常務委員会は第11回会議において、2024年9月13日に法定退職年齢の漸進的な引き上げ実施に関する決定を採択しました。施行は2025年1月1日からで、今後15年かけ徐々に引き上げるということです。
 男性はこれまでの満60歳から63歳に、女性幹部は満55歳から58歳に、一般女性は満50歳から55歳に引き上げるというものです。これまでの法定退職年齢は20世紀の50年代に決まったものであり、70数年経って初めての見直しということになりました。
 新中国成立初期に比べて、中国の平均寿命が、当初の40歳前後から現在では78.6歳に延び、同時に労働者の教育年数も大幅に増え、就職時期が遅くなっています。他方で中国では生産年齢人口(16歳~59歳)の減少が続き、60歳以上の高齢者が増え続けている現状があります。
 したがって今回の法定退職年齢引上げの最大の理由は、現在の人口状況に適応し、高齢化の課題に効果的に対応するためだと思われます。
 その傾向として第1から第4に至るまでの指摘がなされています。
 ◎傾向1.寿命の延び。平均寿命が78.6歳。
中国は既に長寿時代に入り、高齢期がより長くなって、平均寿命が78.6歳まで延び2030年までに平均寿命は80歳に達する可能性が高いとされている。
 ◎傾向2.資質の向上。新規労働力の平均就学年数は14年超。
中国の生産年齢人口の平均就学年数は、1982年の8年から2023年には、11.05年まで延び、特に新規労働力の平均就学年数は14年を超えている。現在、高等教育機関への進学率は60%を超え、高等教育を受けている人口は2.5億人を超え、かつて20歳前後で働き始めていた時代と比べ、現在は労働者が労働市場に参入するのが遅くなっているのに定年が変わらないなら人的資源を十分に利用できていないことになる。
 ◎傾向3.高齢化が進み、高齢者が人口の3割超。
2023年末時点で中国の60歳以上の人口は2.97億人、総人口の21.1%を占めている。2035年前後には60歳以上の人口は4億人を突破して総人口の30%超となり重度高齢化段階に入ると予想されている。
 ◎傾向4.労働力不足、生産年齢人口は約8.6億人。
16歳から59歳までの人口が生産年齢人口と定義されており、社会生産の主力とされる。2023年末、中国の生産年齢人口は約8.6億人で、総人口の61.3%を占めており、2012年より生産年齢人口は年々減少している。
 したがって、定年の引上げは意欲ある高齢労働者が労働力を補う重要な力となり生産年齢人口の下降曲線の平準化を促すことができると強調されています。
 退職年齢引上げ改革はシステム工学であって、人々の関心の高い民生問題に焦点を絞り、年金保険制度の整備、雇用優先戦略の実施、法定退職年齢を超えた労働者の基本的権利、利益保護、高齢者介護、託児サービスシステムの整備を決定し、明確にしました。また高年齢失業者保障や特殊職種などの早期退職についても特別に規定を設けています。

(2024年10月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

人気記事

人気商品

一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 全119記事

  1. 中国における定年延長の決定
  2. 刑法改正のポイント
  3. 中国「会社法」改正のポイント
  4. 中国に銀行預金を残して死亡した場合の解約手続について
  5. 中国所在の不動産を巡る紛争と裁判管轄の問題
  6. 「老後は旅先で」~シニアの新しい生き方~
  7. 中国に出資しようとする外資企業に春が来た
  8. 「企業国外投資管理弁法」の概要
  9. 楽しさと便利さが、庶民の生活を作る。
  10. 中国会社法「司法解釈(4)」の要点解説
  11. 日本産業考察活動メモ
  12. 長江文明・インダス文明、再来の始まりを予感
  13. 中国国務院より「外資誘致20条の措置」が公布されました
  14. 中国の対日投資現状とトレンド(2)~中国の対日投資の論理とトレンド~
  15. 観光気分の危機管理
  16. 訴訟委任状に公証人の認証が必要か?
  17. 『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法』の解説
  18. 婚活は慎重に!とある中国人女性と日本人男性の事例
  19. 新旧<適格海外機関投資家国内証券投資の外国為替管理規定>の比較
  20. 中国では、今年から営業税から増値税に切り換え課税するようになりました。
  21. 土地使用権の期限切れ
  22. 過度な中国経済悲観論について思うこと
  23. 『中華人民共和国広告法(2015年改正)』の施行による外資企業への影響(後編)
  24. 203高地への道
  25. 中国大陸における債権回収事件(後編)
  26. 中国大陸における債権回収事件(前編)
  27. 訪日観光は平和の保障
  28. 大連事務所15周年&新首席代表披露パーティーを行いました
  29. 再び動き出した中国の環境公益訴訟
  30. 「国家憲法の日」の制定
  31. 中国独占禁止法
  32. 道路の渡り方にみる日中の比較
  33. 日本の弁護士と中国の律師がともに講師となってセミナー
  34. 日中平和友好条約締結35周年に思う
  35. 中国におけるネットビジネス事情
  36. 敦煌莫高窟観光の人数制限と完全予約制の実施
  37. 両国の震災支援を両国民の友好につなげたい
  38. 公共交通機関のサービス体制
  39. 「ありがとう」を頻繁に口にすることの効果
  40. 久しぶりの上海は穏やかだ
  41. 事業再編の意外な落とし穴
  42. 強く望まれる独禁法制の東アジア圏協力協定化
  43. いまこそ日本企業家の心意気を持って
  44. iPadに見る中国の商標権事情
  45. 人民元と円との直接取引がスタート
  46. 中・韓のFTA(自由貿易協定)交渉開始と日本
  47. 固定観念を打破し、異質を結びあわす閃きと気概
  48. 若い世代を引きつける京劇
  49. 大都市は交通インフラが課題だ!
  50. 杭州市政府の若手職員の心意気
  51. 13億4000万人を養う中国の国家戦略
  52. 「命の安全」を考える。
  53. 大連で労働法セミナーを開催しました
  54. 中国でも「禁煙」規定が発効
  55. 中国における震災報道から思う
  56. IT通信手段は、不可欠だ。
  57. 日本人は計画的?中国人は行きあたりばったり?
  58. 広州・北京に見るストライキ事情
  59. 商業賄賂で処罰
  60. 大連事務所は開設10周年を迎えました!
  61. 顔が見える交流
  62. 日本は人治、中国は法治?!
  63. 日本の公証人制度
  64. 充電スタンド建設の加速
  65. 上海の成熟した喧噪と法意識の違い
  66. 中国における日本人死刑執行の重み
  67. 中国の富裕層は日本経済の「救世主」か
  68. 日本に追いつき追い越せ/パートII
  69. 国際交流を望む中国研究者にとって日本は遠い国だ
  70. 「文化産業振興計画」の採択
  71. 国慶節に思う
  72. IC身分証明と在日外国人取締強化
  73. 「日本人は・・・・・」「中国人は・・・・・・・」
  74. 中国の携帯電話産業
  75. メラミン混入粉ミルク事件
  76. 大連市の公証人役場
  77. 東北アジア開発の動きと長春の律師
  78. 循環型経済促進法の制定
  79. 北京オリンピックと私たち
  80. 四川大震災に想う
  81. 日・中企業間の契約交渉の実例
  82. 東アジア共同体
  83. レジ袋の有料化
  84. 通訳の質について
  85. 「中国餃子バッシング」に思う
  86. 中国の休日
  87. インドを見てから、あらためて中国を見る
  88. 日中韓の国境は障害を乗り越え、確実に近くなっている。
  89. 北京市の自転車レンタル事業から中国の環境政策を見る
  90. 福田首相と日中友好
  91. 上海の空、東京の空 四日市公害裁判提訴(1967年)から40年後の今に想う
  92. 物権法の制定過程
  93. 司法より行政に権力がある
  94. 中国の『走出去』戦略を読む
  95. 中国の環境問題
  96. 中国のオーケストラ
  97. 春節
  98. 「いじめ」は共通語だ!
  99. 中国を見る眼
  100. 最高人民法院を訪問しました
  101. 機内食のコップ あっという間の進歩
  102. 冷静な眼と暖かい心
  103. 自主的な総合的力量を備える
  104. 宴席は丸か四角か
  105. 「十一五」規画始動!
  106. 依頼人の人権擁護
  107. 身の安全
  108. 中国で「勤勉さ」を学ぶ
  109. 203高地や旅順口などの戦跡を訪れて思う
  110. 「ソウルで味わった韓流の逞しさ」
  111. 中国と日本の立法・行政・司法
  112. くれぐれも御用心
  113. 海外旅行は、法リスクの宝庫だ。
  114. 互いの理解
  115. 信頼関係の形成に向けて
  116. 中国憲法における「改革・開放」路線
  117. 苦情処理センターの効用
  118. 信頼できる中国人パートナーを得る
  119. 外国への進出と契約

執筆者

稲田 堅太郎いなだ けんたろう

弁護士

略歴・経歴

1937年 大阪生まれの姫路育ち
1961年 関西大学(二部)法学部卒業
1967年 司法試験合格(22期)
1970年 大阪弁護士会登録
1979年 法円坂法律事務所開設
2002年~2006年 日本法圓坂律師事務所大連代表処第2代首席代表に就任

主な所属団体
大阪府中小企業家同友会
日中法務交流・協力日本機構(理事)
日本国際貿易促進協会京都総局(常任理事)
日中経済貿易センター
愛知日中青年研修協会(相談役)
日中友好経済懇話会(幹事)

過去の実績
【公害関連】
富山県イタイイタイ病裁判(鉱害)、北九州カネミ油症裁判(食品公害)、大阪スモン病裁判(薬害)などの各常任

【過疎地域での法律活動強化】
日本弁護士連合会業務対策委員会副委員長や法律相談事業に関する委員会の副委員長・委員長として弁護士会の過疎地対策活動へ参加。都市部に集中する弁護士の「過疎地域」における法律相談活動強化が功を奏し、過疎地域での自治体を動かし、現在の法律相談センターや公設法律事務所開設につながりました。

【中小企業支援】
中小企業経営の担い手「大阪府中小企業家同友会」の常任理事や中央支部支部長として中小企業家の先頭に立ち、経営に関わる問題に広く対応。良き相談相手としてネットワークづくり、組織づくり活性化のための活動などを続けています。

<中国関連での活動>
2000年6月8日に中国司法部から正式認可を受け、同年8月に大連市に法律事務所を開設。正式認可を受けた、東北三省(遼寧省・吉林省・黒竜江省)内では一番目の事務所であり、遼寧省・大連市政府関係者らや現地領事館、大連日本商工会等の強力なバックアップの下に活動を展開しています。

講演のタイトル・著書
「国際弁護士が見た中国進出の明と暗」
「中国知的財産権法制度の整備と運用の実態について」
「転換期にある中国の法整備の方向とベトナム情勢」
「中日双方の文化や習慣から見た法的意識の違い」(大連ラジオ放送局)
「中国における日系企業の法律面からみた問題事例」
「体験的日中文化比較」~再認識した日本の素晴らしさ~
「中国での知的財産権をめぐる法整備と運用の実態について」
「知らなかったでは済まない法違反」
「中国進出日系企業の現状と課題」~大連での体験をふまえた法的側面からのアドバイス~
「外資企業の投資に関する法整備の行方」(中国ビジネス事情連絡会)
「大連日系企業と中国法務」
「大連の日系弁護士からみた東北振興政策への提言」(~在瀋陽日本国総領事館~)
「中国の法律問題」~大連での実体験を通して~
「大連進出日系企業の現状と課題-リーガルサポートの視点から-」
「上海『同友会上海倶楽部』講演」~地球温暖化と中国の環境問題~
「『知らなかった』ではすまされない法違反」~在中活動における法律家の役割~
「上海商業専門学校講演」~日本の若者の法意識について~
「地球温暖化と企業活動のあり方」 ~ 中国の環境問題を踏まえて~深圳朋友会
「中国における『知的財産権保護~模倣品問題の現状と対策』」
「日中企業文化比較」~日本企業が培ってきた企業文化~
「中国ビジネスで泣かないための心得」
「中小企業の中国進出と債権回収トラブル防止策」
「中国ビジネスに関する法務について」(MMG近畿会理事会)
「国際金融危機下の中国の行方」
「尖閣諸島をめぐって」
「『関係』から学ぶ」
「ずばり、北朝鮮見たまま」

執筆者の記事

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索