一般2011年08月01日 大連で労働法セミナーを開催しました 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:中島宏治
中国では、2008年に労働契約法が施行されたこと、労働争議調停仲裁法が施行されたことを契機に、労働紛争が労働仲裁に持ち込まれる件数がとても多くなりました。また、2010年には賃上げ目的のストライキが多発しました。広東省のホンダ部品工場のストライキが有名ですが、大連でも多数のストライキが発生しました。
これらの状況を受けて、2011年5月23日、大連日本法円坂律師事務所大連代表処とそれを支える一般社団法人日中法務交流・協力日本機構の共催により、労働法セミナー「なぜ労働紛争は起こるか、どうすれば防げるか」を開催しました。
中国において労働紛争が多い理由には次のようなことがあげられます。
(1)所得格差に伴う不満
急激な経済発展を遂げた中国では、所得格差が大きく、物価も上昇しています。低所得者層においてはそれほど賃金が上がっていないため、所得格差に伴う不満は常に大きいといえます。特に現地法人に勤務する日本人駐在員の賃金が高いことに対する不満も大きいと考えられています。
(2)労働者保護の政府方針と労働者の権利意識の向上
労働契約法の施行が始まったように、中国政府は労働者の権利保護の方針を打ち出しています。それに伴い、労働者の権利意識が大きく変わりました。労働争議調停仲裁法の施行により手続きが無料となったこともあって、労働争議が増加しました。
(3)リーマンショックの影響
リーマンショックを発端とする経済危機に伴い、現地法人はコストを抑え、中国政府も最低賃金の上昇を据え置くという措置をとったことも労働争議を増加させる要因となりました。
(4)農民工の変化
農民工も第二世代と言われる時代となりました。都会周辺に居住し、忍耐力も第一世代とは異なると言われています。ワーカーよりサービス業を志向し、権利意識も高いと言われています。このことも労働争議を増加させる要因となっています。
(5)インターネットや携帯電話の普及
機器の普及により、情報が入手しやすいことは、ストライキ発生に影響があったと言われています。
このような状況から、中国において労働紛争が増えています。解決策としては、労働契約法などの法律の理解を進めることと、従業員とのコミュニケーションを図ることが重要です。
(2011年7月執筆)
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