一般2006年08月02日 自主的な総合的力量を備える 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:川口創
1.中国の対外貿易総額は05年には1兆4221億米ドルに達し、日本を抜いて米国、ドイツに次ぐ世界3位となった。「対外貿易依存度」(輸出入額の対GDP比)も05年には約63%に達した。これを中国経済の「脆弱さ」と見る論者もいるが、中国と世界経済は相互不可分の依存関係にあり、中国経済の動向に日本市場も含めた世界市場が大きく影響を受ける関係になっていることは間違いがない。
2.日本と中国の2国間で見た場合はどうか。04年、日本にとっては戦後初めて、中国がアメリカに代わる最大の貿易相手国となった。米国の景気動向だけを見ていれば良かった時代は過去となり、中国のマーケット抜きに日本経済が語れない時代に突入した。
他方04年の中国の輸出入合計は1兆1548億ドルにのぼり、貿易相手国のうちEUが1位(1773億ドル)、米国は2位(1696億ドル)となり、これまで10年間1位だった日本は3位(1679億ドル)に転落した。日本の対中国依存度が高まる一方で、中国での日本の存在感は相対的に低下している。
3.中国の今後の経済を語るときに無視できないのが「5カ年計画」である。2006年3月に北京で開かれた全国人民代表大会では、2006年-10年までの「第11次5カ年規画」が審議、採択された。今回の第11期から、「計画」(プラン)を「規画」(ガイドライン)に切り替え、中国経済が計画経済体制から市場経済体制に移行した現実が反映されている。
今回の「規画」では、今までの経済成長における量的重視から、質の重視への転換、成長モデルにおける生産効率重視への転換、近郊発展戦略への転換、農村と都市の格差の是正等を盛り込んでいる。「規画」は中国経済の現状と問題点、世界経済の中での中国経済の発展について、緻密に分析した上で、多岐に渡る様々な問題を適切に解決する対策を打ち出し、安定的なマクロ経済政策を実施しようとしている。
4.他方、日本はどうか。残念ながら政府首脳はいまだに「日米関係が良ければ日中関係も良くなる」などと経済実態を無視した発言を平気で述べるし、また首相の靖国への参拝も懸念されている。毎日新聞が主要企業へアンケートをしたところ、過半数の会社が小泉首相が在任中に参拝をすることについて自粛を望んでいるとのことである(2006年7月13日付)。中国との経済活動を考えれば企業として当然の思いではないか。
対中国の経済依存度が高まる中で、わざわざ日本政府が日中関係を阻害する要因を作っていることは残念でならない。しかし、嘆いていても仕方がない。私たち日本の民間人あるいは民間企業は、今まで以上に自身の分析能力と問題解決能力を高めて、対中国戦略を立てていく他あるまい。願わくば、戦略を立てる際の一助に我々法律家を活用頂ければと思う次第である。
(2006年7月執筆)
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