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その他2016年06月22日 土地使用権の期限切れ 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:稲田堅太郎

 中国では日本と違って、国が全ての土地を所有しており、個人の土地に対する所有権は認められていません。しかしながらそれを使う権利である「土地使用権」が認められています。
 土地使用権は大きく二つに分けて、譲渡や賃貸、抵当権の設定ができる「有償払い下げ土地使用権」と無償である代わりにこれらの設定ができない「無償割当て土地使用権」があります。
 中国国務院が1990年に公布した「中国国有土地使用権譲渡、賃貸の暫定条例」によれば、土地使用権はそれぞれ住宅用地が70年、工業用地が50年、商業用地が40年、その他総合用地が50年を最大期限と定められています。
 ところが、各地の地方政府が、この条例以前の80年代や90年代に、使用権期限について独自に20年や30年、50年、70年などと設定し、土地使用権の譲渡をしていました。その当時は高度経済成長時代に突入する間際であって、期限を短くして払い下げ金の納付負担を軽減し、地方における住宅建設や企業進出などを促進する狙いがありました。
 最近になって、中国において土地使用権の期限切れを迎える問題に直面することになりました。
 最初にこの問題が顕在化したのは浙江省温州市のことであり、今年3月に市内の中古住宅をAさんが購入したところ、同住宅の土地使用権が20年間しかなく、既に期限切れとなっていることが判明したのです。Aさんは地元政府に問い合わせたところ、土地使用権を延長するには土地の払い下げ金として現在の住宅価格の3分の1程にあたる数十万元(数百万円)を納付しなければならないとの回答を受け、大きな議論を呼ぶことになりました。
 温州市では現在、20年の期限を設定された土地が期限切れとなっている他、30年の土地も近く期限切れを迎えることになります。
 深セン市や青島市、重慶市、太原市などにおいても同様の問題が生じています。
 中国では土地使用権の延長方法などについての国の詳細規定はなく、一部地域で混乱が生じ、市民が所有する住宅などの財産価値に大きく影響する問題だけにその行方に大きな関心が寄せられています。
 土地使用権の期限を延長するための方法としては国の統一的な細則がないために地方政府や専門家の間でも見解が分かれています。
 各種メディアでは、期限を延長するためには土地払い下げ金を改めて地方政府に納付するべきだとする意見や、国が定める最大期限より短く設定された土地については自動的に延長され、払い下げ金負担も生じないとする考え方も紹介されています。
 専門家によると2007年10月に施行され、不動産と動産の所有権などについて制定した物権法では「住宅建設用地は期限となったら自動延長される」(物権法149条)と定められている規定を活用できるのではないかとのことです。
 深セン市規画・国土資源委員会は4月19日に「微博」の公式アカウントを通じて1995年9月18日より前に譲渡された土地については国が定める最大期限まで延長でき、新たな払い下げ金の負担も必要ないと発表、他方で同期日以後に契約された土地についてはその期限延長方法や払い下げ金の是非、納付基準などについて政策的な検討を進めるとしました。深セン市では1998年9月15日に土地使用権は最大で70年などとする「深セン経済特区土地使用権譲渡条例」の修正案を承認していることが今回の発表の根拠になっているものとみられます。
 北京市や広東省などの担当部署も相次いで土地使用権問題に対する見解を示しています。
 政府系シンクタンクの中国社会科学院の専門家は「全国のほとんどの住宅用土地の期限は70年だが、一部地方で70年を下回るところもあり、払い下げ金が必要かどうかの状況もそれぞれ異なっている」として全国規模で適応する基準などを定める必要性を指摘しています。
 この問題について政府部内も動きだし、中国国土資源部は4月20日、中国メディアに対し、既に浙江省国土資源庁と調査チームを温州市に派遣して調査を開始したことを明らかにしています。

(2016年6月執筆)

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