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その他2017年02月14日 中国の対日投資現状とトレンド(2)~中国の対日投資の論理とトレンド~ 中国律師(弁護士)が見た日系企業 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:陳偉雄

四、中国企業の対日投資の論理
1.対日投資の文化面での心理的なハードルが低い
 日中両国は多くの文化的な伝統を共有している。儒教と仏教をはじめ、中国の哲学、宗教思想は現代の中国と日本に影響を与え、東北アジア地域の「文化的な富」である。
 このような文化の基礎である漢字は今でも日中両国で共通して使えるものがおよそ3000あり、この共通する文化の淵源は、中国による日本への投資の過程で他の国にはない文化的な親近感として作用し、心理的なハードルを下げる積極的な要因となっている。


2.対日投資の政治リスクと社会リスクが低い
 政治リスクと社会リスクは海外投資で必ず考慮しなければならない要素である。投資目的地としての日本の政治リスクと社会リスクは相対的に低いと言える。日中両国の政治関係には時折不協和音が生じるが、長期的な観点で見ると、両国の関係と交流は改善と発展を積み重ねている。2006年、当時の安倍晋三総理が初めて“日中戦略的互恵関係”を提起し、2008年5月7日、当時の胡錦濤主席は福田康夫内閣総理大臣と会談を行い、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関し、多くの共通認識に達した。双方は、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、また、日中両国の平和共存、世代友好、互恵協力、共同発展という崇高な目標を実現していくことを決意し、歴史を直視し、未来に向かい、日中「戦略的互恵関係」の新たな局面を絶えず切り開くことを決意し、将来にわたって絶えず相互理解を深め、相互信頼を築き、互恵協力を拡大しつつ、日中関係を世界の潮流に沿って方向付け、アジア太平洋及び世界の良き未来を共に創り上げていくことを宣言した。2016年9月中国杭州で行われたG20サミットでの日中首脳会談で安倍晋三総理は「協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」という2008年の日中共同声明での合意を実際の行動に移し、更なる関係改善・発展に努めるという決意を確認し、習近平主席からは「戦略的互恵関係」の考え方に基づき、日中両国が直面する共通課題に関する対話や協力、各種交流を進め、両国関係の肯定的な面を拡大することにより、相互信頼を高め、課題を適切に成し遂げるとともに、両国の国民感情を改善していくことが言及された。2015年に日本を訪問した中国からの観光客の数が500万人を超え、日本に進出した中国企業の数がおよそ1200社以上に達する現状も日本社会の安全と安定を証明するものである。


3.一番近い先進国としての日本の魅力
 現在の中国は成長の鈍化に伴い“過剰生産能力を解消し、在庫を消化する”大環境と中央政府からの“万衆革新、全民創業”の経済的な雰囲気に囲まれ、伝統産業はもちろん新興産業及び資本は四方に出口とチャンスを探している。中国は日本に比べ、経済構造、社会環境、生活のクオリティに大きい格差がある。このような日本の優れた要素は中国の投資家が日本に投資するモチベーションになる。まず、両国の資本マーケットに資産評価価値の格差が存在する。そして、マイナス金利政策を導入した日本の企業融資のコストは1%未満であるが、中国の場合は6%から8%が普通である。完全なR&D基盤と優れた人材の確保は多くの中国企業にとっては魅力的だ。安全な治安、綺麗な環境、便利な生活、伝統とモダンが調和した独特な文化なども中国の投資家には対日投資を行う積極的な要因になる。


五、対日投資の最新事例
 2015年の対日直接投資の例としては、1月に電子計測器メーカーの北京普源精電科技(RIGOL)が日本法人を設立したことが挙げられる。同社は日本で電子計測器を販売する。3月には投資会社の徳威国際発展が香港富心国際とともに、6億6,000万円を陽光都市開発に出資し、2社の持ち株比率は32.3%となった。新規リゾート開発事業をはじめ、不動産販売・賃貸・アニメのキャラクター版権の獲得を目指す。11月に民営コングロマリット大手の上海復星集団傘下で商業施設を運営する上海豫園旅游商城は、スキー場やホテルなどを備える総合リゾート施設である星野リゾートトマムを183億円で買収した。ただし、運営は星野リゾートが継続する。また、ネット販売旅行大手の蘇州同程国際旅行社(LY.com)はエイチ・アイ・エス(H.I.S.)と合弁会社を設立。インバウンド市場の成長を背景に、訪日中国人旅行者向けに旅行商品の企画・販売を強化する。


六、対日投資の展望
 国連貿易開発会議(UNCTAD)の「2016世界投資報告」によると、対外直接投資の国・地域別ランキングで中国は、2000年の34位から2005年に19位、2010年には5位と着実に順位を上げ、2015年は米国、日本に次ぐ3位だった。また、2015年末の対外直接投資残高は8位と、2010年の19位から大きく順位を上げている。(データ資料:JETRO調査レポート)
 中国の海外への投資は始まったばかりで、対日投資は今からだとも言える。中国企業が対日投資でもっと重要視すべきことがある。先ず、株主の利益だけではなくお客様、従業員とその家族の利益まで考える商業文化と年功序列、終身雇用を代表とする独特の競争構造及びそれが生まれた長期的、専門的、安定的な匠文化である。次に、安定を何よりも重要視し急激な拡張を避ける商業風土、及び融資コストが低い商業環境で、M&Aを警戒している日本の商業文化を理解し、「弱馬道を急ぐ」のような事態を避ける必要があるだろう。
 多くの中国企業にとっては、より早く日本の先進技術と管理経験を習い、ブランドとライセンスの使用権を取得するのが狙いだ。特に財力を持っている上場企業とその投資ファンドの場合は、よりこの傾向が著しいかも知れない。これは現在の複雑な中国の商業環境の産物である。まるで昔中国が国際企業にとっては生産基地のポジションだったが、現在は消費市場として認識されているように、中国企業と資本にとっても、新しい目線で日本を見ると、日本はR&Dだけではなく、大きい洗練された市場に見えるかも知れない。今後、より多くの中国企業が特に消費、シルバー産業、環境などの分野で日本から国際市場に進出していく可能性が高い。2013年9月に公表された中国政府の「一帯一路」構想と共に、日本は中国の投資目的地として更に中国企業の注目を浴び、対日投資が目に見えて拡大しているのである。

(2016年12月執筆)

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