環境2007年05月02日 中国の環境問題 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:中島宏治
■ 飛躍的な経済成長を続ける中国
中国の経済成長については今更申し上げるまでもないでしょう。1980年から2000年までのGDP(実質国内総生産)の平均成長率が10%近くと飛躍的な経済成長を遂げています。中国共産党は2002年11月の党大会において、2020年の経済規模を2000年の4倍にするという「GDP4倍増プラン」を採択し、毎年その数字が現実的なものとなりつつあります。
他方で、中国における環境破壊の問題も深刻になっています。今回は中国の環境問題について触れてみたいと思います。
■ 経済成長と環境問題の相関関係
かつて日本は、1960年代から1970年初頭にかけて年平均で10%の急成長を成し遂げ、70年代に深刻な公害と環境破壊の問題を起こしました。この流れは残念ながら、日本のみならず、韓国・台湾に代表されるアジアNIES、タイ・マレーシア・インドネシアに代表されるASEAN諸国、中国と引き継がれています。
ここで共通するのは、欧州各国において数世代かかった経済成長の過程をわずか一世代に圧縮したような特異な工業化、アジア的農村社会が壊れた急激な都市化、凄まじい勢いの大量生産・大量消費・大量廃棄の動きです。
経済面では飛躍的な成長を遂げている東アジアの現実も、環境面からみるといくつもの難題に直面している東アジア、という見方もできます。もちろん中国も例外ではありません。
■ ある環境訴訟
少し具体例を見てみましょう。1990年代初め、福建省のある県にアジア最大の塩素酸カリウム生産工場とされる国有企業の工場が建設されました。試験運転期間中に工場周辺の農作物、果樹や樹木が次々と枯れていき、村民の疾病も増えていきました。
この国有企業は、その後福建省の人民法院(裁判所)に1600名を超える原告によって提訴され、農作物等に対する損害賠償請求が一部認められる判決が出るに至りました。この訴訟は、日本でいう水俣病裁判と同様の構造をもっていると考えられます。このように訴訟に至ったケースはまだ少ないと思われますが、同様の事件は多数存在します。
ほかにも、日本の廃棄物が中国に移動して環境問題を引き起こすような報告例もあります。
■ 日本・中国・韓国の国際環境ワークショップ開催
本年8月、日本・中国・韓国の法律家で、環境問題に対する意見交換を行う国際ワークショップが東京にて開催されます。3国間でこのような環境問題に対するワークショップを行うのは初めての試みで、私も含めて関係者は楽しみにしています。公害裁判の歴史においては日本の経験の蓄積が見られる反面、法制度においては日本よりも韓国・中国の方が進んでいる側面もあります。
法律家として、中国の環境問題に対して少しでも貢献できたらと考える今日この頃です。
(2007年4月執筆)
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