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一般2012年06月01日 中・韓のFTA(自由貿易協定)交渉開始と日本 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:川口創

 5月2日、中国の陳徳銘商務相と、韓国外交通商省の朴泰鎬通商交渉本部長が北京で会見し、「中国と韓国は、自由貿易協定(FTA)の交渉を始めることで合意した」と発表しました。
 もともと、2008年12月13日に日本の福岡で行われた日中韓首脳会議(「第1回日中韓サミット」)以降、日中韓三カ国でのFTAが議論されてきました。
 日本にとって、「アジアの活力を日本経済に取り込み、日本経済の発展を」ということであれば、実質対アメリカだけのTPPではなく、日中韓FTAこそ大事だという意見があり、私はもっともな意見だと思います。
 外務省は、2008年の日中韓サミット以降、日中韓FTA交渉入りに向け、様々な対応を進めてきましたが、この間韓国が難色を示していました。
 外務省が「何とか年内には日中韓FTA交渉開始を」と動いていた矢先に、「中韓のFTA交渉が始まる」との発表がされたわけです。
 中韓のみが先行すれば、韓国企業と競う日本勢は、中国市場で不利な立場に置かれます。韓国は、日中韓三カ国での交渉よりも、中韓での交渉を先行させ、日本企業を出し抜く戦略ではないかと指摘されています。
 また、中国も、米国に対抗してアジアの自由貿易圏づくりの主導を狙っています。日本がTPPへの参加も同時に検討する中で、韓国との交渉を先行させ、日本が日中韓のFTA交渉を優先するように促していると考えられます。
 日本の農業をどう守るか、食の安全をどう守るか、という課題は、TPP同様日中韓FTAでも生じるという問題点はありますが、もし、積極的に「アジアの成長を取り込む」ということであれば、TPPよりもはるかに日中韓FTAの方こそ不可欠ではないかと言われています。
 TPPが進まなくとも、日中韓FTAだけ先に進ませることも十分可能です。
 これまで、日本政府は、TPPと日中韓FTAの両方を同時に追い、日中韓FTAに全力を注いでは来なかったと見られています。
 日中韓三カ国FTA締結に向けた道筋ができるかが、TPPなどに比べても遙かに今後の日本経済にとって大事ではないかと思います。
 日本政府が迅速に、日中韓FTA重視の方向に戦略の練り直しが出来るのか、注視していきたいと思います。

(2012年5月執筆)

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