一般2016年11月18日 『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法』の解説 中国律師(弁護士)が見た日系企業 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:劉同強
2016年10月8日、『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法』(以下「弁法」という)が正式に公布、施行されました。「弁法」により、投資産業参入目録特別管理以外の外商投資について、企業の設立及び変更が事前許可管理から事後届出管理となりました。
「弁法」の公布実施は、中国外商投資管理体制の重大変革であり、「重大改革は法律根拠が必要である」との法治精神を反映し、対外開放政策の拡大及び中国ビジネス環境の法治化、国際化、便利化の促進が期待されています。
ここで、「弁法」の制定背景及び内容要点を以下の通り簡単に解説させていただきます(敬称略)。
1、背景
これまでの自由貿易試験区の外商投資管理の経験を纏め、2016年9月3日、中国第12期全国人民代表大会常務委員会第22回会議で外商投資関係の四つの法律(『外資企業法』、『中外合弁企業法』、『中外合作企業法』、『台湾同胞投資保護法』)の修正案を可決し、投資産業参入目録の中の特別管理(制限・禁止・特別要求)以外の外商投資企業の設立及び変更事項を、許可管理から届出管理にした。
そこで、同日(2016年9月3日)、中国商務部は2016年第3号令をもって、「弁法」の意見募集案をネットで公表した。9月22日までの募集期限中に、ビジネス協会、企業、弁護士、学者、外国政府等の様々な領域から530件の意見が提出された。これらの募集意見に基づき、「弁法」を修正し、正式に公表した。
2、「弁法」の内容
「弁法」は5章37条があり、総則、届出手続き、監督管理、法律責任及び附則という内容になっている。
3、届出管理の性質
「弁法」第5条に、外商投資企業の設立届出は、営業許可書が発行される前に行ってもよいし、営業許可書が発行されてから30日以内に行ってもよい、と規定されている。
「弁法」第6条に、外商投資企業の変更届出は、変更事項が発生してから30日以内に行うことと規定されている。
そして、設立及び変更の届出手続きは、届出システムのオンライン申告と申告資料の提出で行うこととなっている。管理機構は申告情報及び関係書類の形式上の完全性及び正確性を確認し、申告事項が届出範囲に属するかどうかを判断し、3日以内に届出手続きを完成する。
外商投資企業は承諾書の形で申告資料の真実性、正確性及び完全性に対して責任を持ち、管理機構は申告情報に対して形式審査を行い、届出受取書の受領も強制的な要求ではない。という意味で、今回の届出は、行政許可と違って、他の手続きを行うための前置条件ではなく、本当の告知性質の「届出」である。
4、届出管理の範囲
「弁法」第2条には、外商投資企業の設立及び変更が、国家規定されている参入特別管理措置に関係ない場合に、本弁法を適用する、と規定されている。ここに言う外商投資参入特別管理措置の範囲は、『外商投資産業指導目録(2015年修訂)』に規定されている制限類、禁止類及び奨励類の中の株式支配と高級管理者に対して特別の要求があるものとされている。これらの分野に投資した外商投資企業は、金額又は投資方式(新設又は買収)に関係なく、以前の許可管理を実施することとなるが、これ以外の分野に投資した場合は、一律届出管理を実施する。
外商投資の上場会社などの会社に対して、申告の利便性から、株式比率の変更が5%以上又は株主の地位が変化した場合だけ届出すればよい、とも規定されている。
対象から言うと、中外合弁企業、中外合作企業、外資企業、外商投資の株式会社が含まれている。同時に、投資類外商投資企業は、外国投資者とみなされ、届出管理を適用する。尚、香港、マカオ、台湾の投資者もこの弁法を参考にする。
5、届出管理の手続き
「弁法」に規定されている外商投資企業の設立及び変更届出は主に三つのステップがある。まずは、届出システムを使って、オンラインで届出情報を入力し、申請資料を提出すること。次に、管理機構は入力情報の形式上の完全性及び正確性を確認し、申告事項が届出の範囲に属するかどうかを判断すること。最後は、申請者が届出受取書をもらうかどうかを選択すること。
届出管理の担当機構は、国務院商務主管部門、各省(副省も含む)レベルの商務主管部門及び自由貿易試験区、国家レベルの経済技術開発区の関係機構になる。
6、届出情報の要求
①如実に届け出ること。「弁法」第4条には、届出情報の真実性、正確性、完全性が要求され、これを保証する承諾書の提出も規定されている。
②届出情報の補充と完備。「弁法」第11条には、届出手続き中に、管理機構は関係情報の補充又は状況説明を企業に要求することができる、と規定されている。
③監督検査をもって届出情報の真実性と正確性を確保。「弁法」第14条には、管理機構は届出情報を監督、検査することができる、第20条には、企業は関係資料の提出に協力すべきである、と規定されている。
7、法律責任
「弁法」第24条には、企業が期限通り届出義務を履行しない場合、届出の際に重大な漏れがあった場合は、管理機構より是正命令が出される。是正せず又は事情が重大な場合は、3万元以下の罰金を課する。又、届出義務の履行を逃避し、真実状況を隠したり、偽りの情報を提供したりした場合は、管理機構より是正命令が出され、同時に3万元以下の罰金を課する、と規定されている。
届け出てから、商務主管部門だけではなく、公安、国有資産、税関、税務、工商、証券、外貨などの関係行政部門は協力し合い、情報共有を促進する。外商投資企業に何等かの違法行為がある場合、関係部門に通報し、当該外商投資企業の誠実信用ファイルに記入する。不誠実の行為が生じてから、3年以内に再発がない場合、不誠実の記載はファイルより削除する。
尚、届出義務履行において、他の法律の違反事項が生じる場合、関係部門よりそれなりの法律責任を追究することとなる。
8、過渡期について
「弁法」第29条の規定により、「弁法」施行前に受理された外商投資企業の設立及び変更事項について、許可手続きが終了していなく、且つ「弁法」に規定されている届出範囲の事項に属する場合、許可手続きは終了し、外商投資企業は本弁法の規定に従い届出の手続きに進むこととなっている。
(2016年10月執筆)
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