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その他2011年09月01日 「命の安全」を考える。 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:菅原哲朗

1 大連市で2011年8月14日、化学工場の撤去を求める約1万2千人の抗議行動が起きた。経過について、論評も含め関連するニュースを拾ってみると「命の安全」というキーワードが人々を動かす「正義の感情」として浮かび上ってくることがわかる。

 「中国の国営新華社通信などによると、遼寧省大連市で14日、同市沿海地域にある化学工場から有害物質の流出の恐れがあるとして、工場の撤去を求める市民ら1万2千人以上が同市政府庁舎前に集まった。数百人の治安当局要員とにらみ合い、一部で小規模な衝突が起きた。」
 「中国遼寧省大連市で14日に起きた化学工場移転を求める一万人規模の抗議デモを受け、市トップの唐軍・共産党委員会書記は、工場移転を約束した。社会安定のため、早期の事態収拾に迫られたとみられるが、市民の要求を即日受け入れるのは異例。『権利意識』が市指導部を動かしたといえる。
 問題となったのは、ポリエステル繊維などの原料となるパラキシレン(PX)を生産する「大連福佳大化石油化工」の工場。8日に台風が接近した際、工場近くの防波堤が決壊。有毒物質が漏れ出す恐れが強まり、デモが呼び掛けられた。」
 「呼び掛けには簡易ブログ「微博」などに加え、当局の規制が届きにくい、不特定多数の参加者が画面上でチャット(おしゃべり)する「QQ」と呼ばれるサービスが使われ、一気に広まった。」
 「『台風で有毒物質が漏れ出す恐れが出て初めて、工場が恐ろしいものだと分かった。説明しなかった政府の責任は大きい』市政府庁舎前で14日、スローガンを叫んでいた女子学生(21)は携帯電話のメールで知人にデモ参加を呼び掛けたと打ち明けた。」
 「中国遼寧省大連市で化学工場の移転を求める市民らが14日起こしたデモは、参加者の多くが10代や20代の若者だった。目的は異なるが、若者が主体で、抗議の対象が次第に官僚の腐敗など政府に向かったことなど、昨年の中国漁船衝突事件の船長逮捕をきっかけに発生した反日デモと類似点も多い。」
 「今回は環境保護を訴え、生活を守りたいという権利意識の高まりを受けた典型的な都市型のデモで、反日デモとの違いも見える。」

2 テレビというマスメディアは映像ニュースとして我々に強烈なインパクトを与える。
 2011年3月11日、東日本大震災で大地震・津波・原発事故が発生し、未だ福島第一原発による放射能汚染の深刻な被害は収まらない。
 2011年7月23日に中国・温州で発生した中国高速鉄道(中国版新幹線)の追突転覆脱線事故は、橋桁に宙づりの車両を撤去のうえ直ちに復旧し、運行を再開した。
 二つの大事故は電力(原発)・交通(鉄道)という公共インフラ施設が津波と落雷という自然の脅威に端を発しつつも、真実は日本・原子力村と中国・鉄道省村による「人災だ」という世論の評価が徐々に固まってきている。
 現場サイドが「原子力発電所の全電源喪失という想定外の事故」や「最先端の列車集中制御装置 (CTC)・自動列車保護装置 (ATP)たる緊急ブレーキ不能事故」といった「危機管理」に対処できないことは、国家のリーダーすなわち国家プロジェクトの科学システムを実施する頭脳が「命の安全」を軽視していることを示す。
 鉄道省が中国版新幹線の生存者捜索を早めに切り上げ、ショベルカーで先頭車両を破壊し土中に埋めた映像、証拠隠滅との世論の批判で掘り返す作業は、真実を究明し「安全対策」につなげる科学的思考とは無縁だ。同様に福島第一原発事故に関し、テレビ報道で見る、巡る政府・官僚の見苦しい言い訳や東京電力から当初から炉心融解の事実が明らかになる度に秘密体質による隠蔽の存在が見せつけられる。
 この国家プロジェクトの科学システムが引き起こした日中における巨大な事故は、両国の庶民に自分の身の安全は自ら守らねばならないという「命の尊さ」を教えた、と言えよう。

3 中国各地に福島第一原発に関するテレビニュースが流れ、多くの中国人が関心を寄せている。親日的なネット住人の発言は「この10年で初めて日本に失望した」「放射能は怖い」「日本はいったい何をやっているんだ?まったく意味が分からない。」との反応だ、という。
 確かに日本の秋葉原の電化製品は、中国製品より「高性能・高品質」「故障しにくく、不良品がない」「偽物はなく、信頼できる」「長年のブランド力がある」等々、中国人旅行客は安心して土産に買っていく。
 しかし、信頼性と安全性は同一ではない、「信頼」と「安全」は異なる概念なのだ。まさに、「命の安全」というキーワードが庶民が安心して日々生活するための重要な判断基準となってきた。

(2011年8月執筆)

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