一般2012年07月02日 人民元と円との直接取引がスタート 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:稲田堅太郎
中国人民元と日本円との直接取引が本年6月1日から上海と東京の両方の市場でスタートしました。
これは世界第2位と第3位の経済体である両国の通貨がグローバル金融市場において初めて握手するもので、世界最大と第2位の外貨準備国の通貨の直接対話が始まります。
この様な措置は日中経済・貿易関係の深い発展を促すだけでなくポスト金融危機時代の国際通貨システムの改革にもプラスの影響をもたらすであろうといわれています。
中国と日本はお互いに貿易対象国であって両国通貨の直接交換実現によって元と円との日中貿易決済における利用率が高まり、アジアおよび世界の他の経済体に対しても良いモデルとなり、アジア及び世界の貿易、投資面の米ドル依存度を徐々に下げ、地域経済協力の進展と地域の金融安定を維持する上においても一助となるものと期待されています。
従来、元と円の交換にはドルの仲介が必要であり、この過程でドルは「料金所」としての作用と「メガホン」としての作用をしていたことになります。日中貿易では元でも円でも輸出入ともドルの双方向の「料金所」を通らなければならないことになっていました。
日本の統計によると昨年の日中貿易は過去最高の3449億ドルに達しており、その大部分がドル決済であって、ドル「料金所」は企業に対して多額の取引コストをもたらしていました。またドルは日中の通貨の為替レート形成の上で「メガホン」の作用があり、企業にとって一層制御不能の為替リスクをもたらしてもいました。特に現在ドルの地位が下がり価格が乱高下しているために為替市場の「メガホン」の声が調子はずれのものになりやすく、元と円の相対的価格をねじ曲げることになり、苦しい経営の中での為替リスクのために巨額の損失を蒙る可能性がありました。
円は国際通貨であるものの国際化の程度はドルやユーロに及ばないが、グローバル外為市場における取引高はドル・ユーロに次ぐものです。したがって、両国通貨の直接取引の実現はその背景に中国経済の持続的成長の見通しに対する日本の「信任票」であり、元が経済力を支えに国際通貨に向かって前進していく重要な一歩であるともいわれています。
西側先進国の債務が重く、既存の国際通貨システムの脆弱さが表われ、国際金融市場のリスクも蓄積されている状況の中で、日中が財政、金融協力を深め、元の国際化を共に推進することで、さまざまなリスクを有効に分散し、世界の通貨システム改革を促し、アジアの主要通貨を含めて、多様な準備通貨が共存する新たな世界的通貨構成の確立を推進できるものとして大きな期待が高まっています。
(2012年6月執筆)
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