一般2006年12月06日 最高人民法院を訪問しました 日本人弁護士が見た中国 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:中島宏治
先日、中国の最高人民法院(日本でいう最高裁判所)を見学する機会に恵まれました。法廷はまるで新しい映画館のように傍聴席が座りやすく、とてもきれいでした。講堂のような裁判官が意見交換するスペースや、インターネット検索ルームがあったことが想定外で、卓球ルームがあったのが想定内でした。
最高人民法院の仕事は3つに分けられます。1つめは審判(裁判)、2つめは司法解釈、3つめは司法行政管理です。審判は刑事事件(2部)、民事事件(4部)、行政事件(1部)に分けられています。民事事件の例でいうと、民事第1部が婚姻・相続、不動産、労働、不法行為などの自然人を中心とした事件を取り扱い、民事第2部が金融、証券、法人間の契約関係などの事件を取り扱い、民事第3部が知的財産権などの事件を取り扱い、民事第4部が海事海商、渉外などの事件を取り扱っています。
中国の最高人民法院で日本の最高裁判所と最も異なる業務が「司法解釈」を行うことです。司法解釈とは法律解釈に疑問があるときに最高人民法院が司法解釈を行うことによって全国統一の法理解釈を行うことをいいます。これは下級裁判所から一定の疑問がとりまとめられて最高人民法院に司法解釈の申請がなされると、最高人民法院の「審判委員会」のとりまとめによって制定公布される仕組みになっているとのこと。実質的には法律の補充解釈を行うことになり、実務でも非常に重要な役割を果たしています。下級裁判所の裁判官が最高人民法院に解釈について質問することは減ってきているようです。
中国の裁判所は最高人民法院、高等人民法院、中等人民法院、基層人民法院の4つのレベルに分かれており(この点は日本と同じ)、全国で約17万人の裁判官がいるそうです。最高人民法院だけでも研究員の裁判官を含めて100名余りの裁判官がいます。それでも事件の増加や来年上半期に制定が予想される物件法の司法解釈などにより、人手不足のため増員が必要とのことでした。
対応していただいた2人の裁判官はとても気さくで、質問にもフランクに回答していただきました。印象的だったのは日本と中国の法律家でもっと意見交換しましょうという言葉でした。私たちも、微力ではありますが尽力していきたいと思います。
(2006年12月執筆)
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