一般2010年01月05日 国際交流を望む中国研究者にとって日本は遠い国だ 日本人弁護士が見た中国) 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:菅原哲朗
1 アジアスポーツ法学会国際学術研究大会2009
2009年9月18日から19日、早稲田大学で開催された「アジアスポーツ法学会国際学術研究大会2009(Asian Sports Law Association International Conference 2009)兼日本スポーツ法学会第17回大会」は、「(趣旨)スポーツ紛争においては、スポーツ権の保障が全うされているとはいえない。スポーツ権の保障を全うさせるためには、様々なスポーツ競技団体内部の規則も含め、アンチ・ドーピングやスポーツ紛争解決機関(ADR)の手続きなどスポーツ関連の法規、特に、新たに立法される「スポーツ基本法」においてスポーツ権を明記し、これを保障するための制度を整備することで、スポーツ権の確立を図っていく必要がある。」として大会アピール「スポーツ基本法立法とスポーツ権の確立を求める!」を採択し、中国および韓国の研究者を外国招待者とした国際大会も成功裏に閉幕した。
2 韓国・中国の大学教授招待への事務対応
暑い夏休みも過ぎ、大会1ヶ月前の8月末になり、中国からの英文のサマリーと中国語の講演原稿はメール送信されたが、締め切りを過ぎた段階でも、韓国からの原稿は1本のみで6本がまだ届いていない、事務局はメールだけでなく、韓国の大学へ何度となく国際電話で原稿催促をし、やきもきしていた。
突然、中国人招聘状が届いていないという連絡が入った。中国サイドとりわけ中国体育総局オリンピック委員会にコネを持つ大学の諸先生は航空券は購入済みだが、日本への入国ビザが下りていないという緊急事態だとわかった。
国際電話の状況では、南京・西安の諸先生も北京に集合してくるので、日本大使館領事部向けに国際学術大会参加の招聘状を新たに送りなおす必要が生じる可能性があること、また、再依頼があった中国の体育法学会会長への派遣依頼状はカラーPDFのメール添付だけでなく、学会長の朱肉印を捺印した文書を郵送することとした。
しかし、結局入国ビザは入手出来ず、中国側から9月18日大会に間に合ったのは1名のみで、手続きを急いでも日本に入国出来るのは9月20日以降で全く意味が無く、7名の中国人研究者は無念の涙で北京から故郷の大学に戻った。
3 スポーツ交流が冷めた時期
日本入国ビザ申請に当たっては、一定の経済能力があることが必須で「個人観光ビザの申請には年収25万元(約350万円)以上が必要となる」という噂が喧伝されるほど、中国人の日本個人観光(短期15日間)が2009年7月1日から開放されたとマスコミ報道されている。
北京日本大使館・上海総領事館・広州総領事館は7月1日以降、管区内の中国人住民による個人観光ビザの申請を受け付けている。もちろん個人観光ビザ申請には、日本大使館指定の中国側旅行社を通じて行うものとされ、身分証や戸籍などの身分を証明する書類だけでなく、日本側旅行社による招待状、航空券証明、ホテルやハイヤーの予約など旅行を証明する書類も必要だ。中国人富裕層は「秋葉原で買い物をしてから、北海道の温泉につかる」といった旅行に人気があるという。
しかし、個人観光の解禁は不法滞在を増やしかねないとの懸念もあり、個人観光ビザ発給の対象は、中国人富裕層を対象に添乗員の同行を求めない個人旅行の解禁であって、観光目的で日本に行く中国人に限られ、ビジネスや親戚訪問など観光以外の短期滞在を希望する人は含まれない。
日本と中国は「一衣帯水」の距離になると言われる。
日本と韓国は短期の海外出張なら、パスポートと航空券があれば、何の心配もいらない。
しかし、社会主義国である中国から資本主義国日本に海外出張する場合は事情が違う。特に日本側が、所謂「あご・あし」付きで(ホテル・交通費の滞在費を負担する)招待するパターンは、厳格に申請文書の真偽を確認するため入国ビザ申請に時間がかかる。
今回の入国ビザの遅れは、私の推測するところ、熱狂的な2008年8月北京オリンピックが終わり、かつ組織担当者の人事異動なりが重なり、スポーツ交流が冷めた時期に発生したトラブルだと思っている。
(2009年12月執筆)
人気記事
人気商品
一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 全117記事
- 中国「会社法」改正のポイント
- 中国に銀行預金を残して死亡した場合の解約手続について
- 中国所在の不動産を巡る紛争と裁判管轄の問題
- 「老後は旅先で」~シニアの新しい生き方~
- 中国に出資しようとする外資企業に春が来た
- 「企業国外投資管理弁法」の概要
- 楽しさと便利さが、庶民の生活を作る。
- 中国会社法「司法解釈(4)」の要点解説
- 日本産業考察活動メモ
- 長江文明・インダス文明、再来の始まりを予感
- 中国国務院より「外資誘致20条の措置」が公布されました
- 中国の対日投資現状とトレンド(2)~中国の対日投資の論理とトレンド~
- 観光気分の危機管理
- 訴訟委任状に公証人の認証が必要か?
- 『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法』の解説
- 婚活は慎重に!とある中国人女性と日本人男性の事例
- 新旧<適格海外機関投資家国内証券投資の外国為替管理規定>の比較
- 中国では、今年から営業税から増値税に切り換え課税するようになりました。
- 土地使用権の期限切れ
- 過度な中国経済悲観論について思うこと
- 『中華人民共和国広告法(2015年改正)』の施行による外資企業への影響(後編)
- 203高地への道
- 中国大陸における債権回収事件(後編)
- 中国大陸における債権回収事件(前編)
- 訪日観光は平和の保障
- 大連事務所15周年&新首席代表披露パーティーを行いました
- 再び動き出した中国の環境公益訴訟
- 「国家憲法の日」の制定
- 中国独占禁止法
- 道路の渡り方にみる日中の比較
- 日本の弁護士と中国の律師がともに講師となってセミナー
- 日中平和友好条約締結35周年に思う
- 中国におけるネットビジネス事情
- 敦煌莫高窟観光の人数制限と完全予約制の実施
- 両国の震災支援を両国民の友好につなげたい
- 公共交通機関のサービス体制
- 「ありがとう」を頻繁に口にすることの効果
- 久しぶりの上海は穏やかだ
- 事業再編の意外な落とし穴
- 強く望まれる独禁法制の東アジア圏協力協定化
- いまこそ日本企業家の心意気を持って
- iPadに見る中国の商標権事情
- 人民元と円との直接取引がスタート
- 中・韓のFTA(自由貿易協定)交渉開始と日本
- 固定観念を打破し、異質を結びあわす閃きと気概
- 若い世代を引きつける京劇
- 大都市は交通インフラが課題だ!
- 杭州市政府の若手職員の心意気
- 13億4000万人を養う中国の国家戦略
- 「命の安全」を考える。
- 大連で労働法セミナーを開催しました
- 中国でも「禁煙」規定が発効
- 中国における震災報道から思う
- IT通信手段は、不可欠だ。
- 日本人は計画的?中国人は行きあたりばったり?
- 広州・北京に見るストライキ事情
- 商業賄賂で処罰
- 大連事務所は開設10周年を迎えました!
- 顔が見える交流
- 日本は人治、中国は法治?!
- 日本の公証人制度
- 充電スタンド建設の加速
- 上海の成熟した喧噪と法意識の違い
- 中国における日本人死刑執行の重み
- 中国の富裕層は日本経済の「救世主」か
- 日本に追いつき追い越せ/パートII
- 国際交流を望む中国研究者にとって日本は遠い国だ
- 「文化産業振興計画」の採択
- 国慶節に思う
- IC身分証明と在日外国人取締強化
- 「日本人は・・・・・」「中国人は・・・・・・・」
- 中国の携帯電話産業
- メラミン混入粉ミルク事件
- 大連市の公証人役場
- 東北アジア開発の動きと長春の律師
- 循環型経済促進法の制定
- 北京オリンピックと私たち
- 四川大震災に想う
- 日・中企業間の契約交渉の実例
- 東アジア共同体
- レジ袋の有料化
- 通訳の質について
- 「中国餃子バッシング」に思う
- 中国の休日
- インドを見てから、あらためて中国を見る
- 日中韓の国境は障害を乗り越え、確実に近くなっている。
- 北京市の自転車レンタル事業から中国の環境政策を見る
- 福田首相と日中友好
- 上海の空、東京の空 四日市公害裁判提訴(1967年)から40年後の今に想う
- 物権法の制定過程
- 司法より行政に権力がある
- 中国の『走出去』戦略を読む
- 中国の環境問題
- 中国のオーケストラ
- 春節
- 「いじめ」は共通語だ!
- 中国を見る眼
- 最高人民法院を訪問しました
- 機内食のコップ あっという間の進歩
- 冷静な眼と暖かい心
- 自主的な総合的力量を備える
- 宴席は丸か四角か
- 「十一五」規画始動!
- 依頼人の人権擁護
- 身の安全
- 中国で「勤勉さ」を学ぶ
- 203高地や旅順口などの戦跡を訪れて思う
- 「ソウルで味わった韓流の逞しさ」
- 中国と日本の立法・行政・司法
- くれぐれも御用心
- 海外旅行は、法リスクの宝庫だ。
- 互いの理解
- 信頼関係の形成に向けて
- 中国憲法における「改革・開放」路線
- 苦情処理センターの効用
- 信頼できる中国人パートナーを得る
- 外国への進出と契約
関連カテゴリから探す
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.