カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

売買2026年08月31日 中国における不動産売買について 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:夏目武志

 弁護士はその業務の中で不動産の売買に携わることがある。今回は、私の実際の業務経験も踏まえて、中国における不動産売買に関し、日本人が知っておくと有益と思われる情報をいくつかご紹介したい。

1 登記情報の確認について

(1)日本では不動産の登記情報は誰でもいつでも自由に見ることができる。

日本での不動産売買に際し、まず登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、所有者、抵当権その他の権利関係を確認することは、日本人にとっては常識といえる。
 一方、中国では、この点に関する状況が日本とは異なっている。
 中国でも統一不動産登記制度という制度は存在しているものの、登記情報を誰でも自由に取得できる制度にはなっていない。原則として、権利者や利害関係人など一定の資格を有する者のみが閲覧・取得できる仕組みになっている。
 したがって、買主側としては、売主から不動産権証書や房産証(中国語では不动产权证书、房产证・房屋所有权证)の原本を提出してもらい、確認したうえで、売買契約を締結するというのが実務の流れとなっている。
 不動産権証書や房産証は、日本における権利証(登記済証)に近いものであり、権利者、所在地、面積、用途、権利の種類などの基本的な情報が記載されており、赤色の表紙の小冊子状になったものである。

(2) 売買契約の締結交渉が具体化した場面であれば、売主は不動産権証書や房産証の提出に協力してくれるので、当該不動産の権利関係を確認することができるが、ここで、それ以外の場面では不動産の権利関係を調べることはできないのか、という疑問が湧いてくるであろう。日本人弁護士にとって、不動産の登記情報を調べることは日常茶飯事であり、それができないとすれば著しく不便を感じるからである。

この点、結論としては、なかなか難しい、というのが実情である。
 上述のとおり、利害関係人であれば不動産の権利関係を調査できるのであるが、具体的な利害関係を立証することは困難であることも多い。
 そのため、たとえば、弁護士が相手方の不動産に関する情報を調べるためには、人民法院の調査令を取得しなければならないという理解があり、中国律師に相談しても、基本的に裁判を起こさないといけない、という回答が返ってきてしまう。日本のようにお手軽に権利関係を調査することはできないのである。
 中国の実務では、特定の人物がどんな不動産を持っているかを調べる「以人查房」は制限されており、その趣旨はプライバシー保護に基づくもののようである。
 日本では、近時、登記簿図書館のサービスなどにより、特定の人物が所有している不動産について広く調査することがしやすくなったことと比べ、日中間の実務では大きな違いがある。

2 売買代金の国際送金について

日本人が中国で不動産を売却した場合には、最終的に、その売却代金を日本へ送金したいというケースが少なくないと思われる。
 中国では厳格な外貨管理制度が採られているため、不動産の売却代金を日本へきちんと送金できるのか、心配される方もいるかもしれない。
 この点については、結論として、必要な書類が整っていれば、日本の銀行への海外送金は可能である。
 一般には、売買契約書、税金の納付証明書、登記関係書類などが必要となることが多いが、中国における実務としては、実際に、海外送金部門がある銀行に出向いて、窓口の担当者に具体的な状況を説明したうえ、当該事案における具体的な必要書類を確認することが必要になる。この点、電話一本で適切な回答を得られる日本の場合とは実情が異なることが多い。必要な書類を準備できないと送金依頼を受け付けてもらえないし、手続きに一定の時間がかかることもあるので、予め必要事項を確認し、段取りよく準備をして手続きを行うことが肝要である。

(2026年8月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 全127記事

  1. 中国における不動産売買について
  2. オンライン化・迅速化が進む中国の民事訴訟
  3. 最近の中国内の動向情報
  4. 2025大連講演会の模様など
  5. 撤退における労務リスクについて
  6. 中国からの撤退について
  7. 中国の離婚法制
  8. 大連訪問と中国の銀行更新手続き
  9. 中国における定年延長の決定
  10. 刑法改正のポイント
  11. 中国「会社法」改正のポイント
  12. 中国に銀行預金を残して死亡した場合の解約手続について
  13. 中国所在の不動産を巡る紛争と裁判管轄の問題
  14. 「老後は旅先で」~シニアの新しい生き方~
  15. 中国に出資しようとする外資企業に春が来た
  16. 「企業国外投資管理弁法」の概要
  17. 楽しさと便利さが、庶民の生活を作る。
  18. 中国会社法「司法解釈(4)」の要点解説
  19. 日本産業考察活動メモ
  20. 長江文明・インダス文明、再来の始まりを予感
  21. 中国国務院より「外資誘致20条の措置」が公布されました
  22. 中国の対日投資現状とトレンド(2)~中国の対日投資の論理とトレンド~
  23. 観光気分の危機管理
  24. 訴訟委任状に公証人の認証が必要か?
  25. 『外商投資企業設立及び変更届出管理暫定弁法』の解説
  26. 婚活は慎重に!とある中国人女性と日本人男性の事例
  27. 新旧<適格海外機関投資家国内証券投資の外国為替管理規定>の比較
  28. 中国では、今年から営業税から増値税に切り換え課税するようになりました。
  29. 土地使用権の期限切れ
  30. 過度な中国経済悲観論について思うこと
  31. 『中華人民共和国広告法(2015年改正)』の施行による外資企業への影響(後編)
  32. 203高地への道
  33. 中国大陸における債権回収事件(後編)
  34. 中国大陸における債権回収事件(前編)
  35. 訪日観光は平和の保障
  36. 大連事務所15周年&新首席代表披露パーティーを行いました
  37. 再び動き出した中国の環境公益訴訟
  38. 「国家憲法の日」の制定
  39. 中国独占禁止法
  40. 道路の渡り方にみる日中の比較
  41. 日本の弁護士と中国の律師がともに講師となってセミナー
  42. 日中平和友好条約締結35周年に思う
  43. 中国におけるネットビジネス事情
  44. 敦煌莫高窟観光の人数制限と完全予約制の実施
  45. 両国の震災支援を両国民の友好につなげたい
  46. 公共交通機関のサービス体制
  47. 「ありがとう」を頻繁に口にすることの効果
  48. 久しぶりの上海は穏やかだ
  49. 事業再編の意外な落とし穴
  50. 強く望まれる独禁法制の東アジア圏協力協定化
  51. いまこそ日本企業家の心意気を持って
  52. iPadに見る中国の商標権事情
  53. 人民元と円との直接取引がスタート
  54. 中・韓のFTA(自由貿易協定)交渉開始と日本
  55. 固定観念を打破し、異質を結びあわす閃きと気概
  56. 若い世代を引きつける京劇
  57. 大都市は交通インフラが課題だ!
  58. 杭州市政府の若手職員の心意気
  59. 13億4000万人を養う中国の国家戦略
  60. 「命の安全」を考える。
  61. 大連で労働法セミナーを開催しました
  62. 中国でも「禁煙」規定が発効
  63. 中国における震災報道から思う
  64. IT通信手段は、不可欠だ。
  65. 日本人は計画的?中国人は行きあたりばったり?
  66. 広州・北京に見るストライキ事情
  67. 商業賄賂で処罰
  68. 大連事務所は開設10周年を迎えました!
  69. 顔が見える交流
  70. 日本は人治、中国は法治?!
  71. 日本の公証人制度
  72. 充電スタンド建設の加速
  73. 上海の成熟した喧噪と法意識の違い
  74. 中国における日本人死刑執行の重み
  75. 中国の富裕層は日本経済の「救世主」か
  76. 日本に追いつき追い越せ/パートII
  77. 国際交流を望む中国研究者にとって日本は遠い国だ
  78. 「文化産業振興計画」の採択
  79. 国慶節に思う
  80. IC身分証明と在日外国人取締強化
  81. 「日本人は・・・・・」「中国人は・・・・・・・」
  82. 中国の携帯電話産業
  83. メラミン混入粉ミルク事件
  84. 大連市の公証人役場
  85. 東北アジア開発の動きと長春の律師
  86. 循環型経済促進法の制定
  87. 北京オリンピックと私たち
  88. 四川大震災に想う
  89. 日・中企業間の契約交渉の実例
  90. 東アジア共同体
  91. レジ袋の有料化
  92. 通訳の質について
  93. 「中国餃子バッシング」に思う
  94. 中国の休日
  95. インドを見てから、あらためて中国を見る
  96. 日中韓の国境は障害を乗り越え、確実に近くなっている。
  97. 北京市の自転車レンタル事業から中国の環境政策を見る
  98. 福田首相と日中友好
  99. 上海の空、東京の空 四日市公害裁判提訴(1967年)から40年後の今に想う
  100. 物権法の制定過程
  101. 司法より行政に権力がある
  102. 中国の『走出去』戦略を読む
  103. 中国の環境問題
  104. 中国のオーケストラ
  105. 春節
  106. 「いじめ」は共通語だ!
  107. 中国を見る眼
  108. 最高人民法院を訪問しました
  109. 機内食のコップ あっという間の進歩
  110. 冷静な眼と暖かい心
  111. 自主的な総合的力量を備える
  112. 宴席は丸か四角か
  113. 「十一五」規画始動!
  114. 依頼人の人権擁護
  115. 身の安全
  116. 中国で「勤勉さ」を学ぶ
  117. 203高地や旅順口などの戦跡を訪れて思う
  118. 「ソウルで味わった韓流の逞しさ」
  119. 中国と日本の立法・行政・司法
  120. くれぐれも御用心
  121. 海外旅行は、法リスクの宝庫だ。
  122. 互いの理解
  123. 信頼関係の形成に向けて
  124. 中国憲法における「改革・開放」路線
  125. 苦情処理センターの効用
  126. 信頼できる中国人パートナーを得る
  127. 外国への進出と契約

執筆者

夏目 武志なつめ たけし

弁護士

略歴・経歴

1999年03月 中央大学卒業
2000年11月 司法試験合格
2002年09月 司法研修所(岐阜地方裁判所配属)修了
2002年10月 弁護士登録 名古屋第一法律事務所入所
2014年04月 日本法圓坂律師事務所大連代表処第4代首席代表に就任

 日本国内の業務では、多くの中小企業の顧問として、中小企業が日常的に抱える各種問題に対し、いつでも気軽に相談できる身近な存在として、迅速できめ細かい対応を心掛けています。2004年に愛知中小企業家同友会に入会し、2012年には名古屋第一青年同友会会長を務めました。
 中国関連の業務では、2014年に日本法圓坂律師事務所大連代表処第4代首席代表に就任し、在瀋陽日本国総領事館在大連領事事務所や大連日本商工会、中国に進出している日系企業の顧問を務めるほか、日本企業に対する中国法全般のサービスを提供しています。また、最近は中国の企業や個人からの依頼も増えてきて、日本法に関する各種情報のご提供や日本での訴訟代理など様々な業務を行っています。
 愛知県弁護士会では国際委員会に所属しています。

セミナー・講演
2013年11月(大連) 株式会社京都銀行大連駐在員事務所との共催
   テーマ「現地法人のかかえる様々なリスクへの対応その1」
       -新外国人出入国管理条例、商標法改正をふまえて-
2014年6月(大連) 株式会社京都銀行大連駐在員事務所との共催
   テーマ「現地法人のかかえる様々なリスクへの対応その2」
       -①契約等日常的なリスク対応と②撤退等非常時を想定したリスク対応-
2015年8月(大連) コンシェルジュ20周年記念セミナー
   テーマ「新しい時代を切り拓くための法律講座」
       -中国・大連と共に成長・発展することを目指して-
2015年9月(大阪) 広東広信君達法律事務所との共催セミナー
   テーマ「中国事業にかかわる問題点とその解決策」
       -日本人弁護士の視点で語る中国での清算、撤退に関する近時の動向-
2016年2月(大連) 株式会社京都銀行大連駐在員事務所との共催
   テーマ「現地法人のかかえる様々なリスクへの対応その3」
       -①新環境保護法 ②撤退・労務紛争に関する近時の状況-
2017年4月(大連) 株式会社京都銀行大連駐在員事務所との共催
   テーマ「日中両国の弁護士が語る最新の法律実務」
       -①外商投資を巡る新たな動き、②撤退に関する新たな動向・企業
        破産法を巡る最新の実務、③日系企業の役に立つ最近の実例紹介-
2018年3月(大連) 株式会社京都銀行大連駐在員事務所との共催
   テーマ「日中両国の弁護士が語る最新の法律実務」
       -環境に関する法律問題と近時の実務動向-
2018年5月(上海) 上海大成律師事務所日本業務部主催 中国ビジネス法務サロン
   テーマ「環境法特別講義」

執筆者の記事

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索