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契約2025年02月17日 大連訪問と中国の銀行更新手続き 一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 執筆者:菅原哲朗

1、日本国内外を問わず新型コロナ禍は、我々の社会生活に様々に影響している。
 学生時代の友人から2024年9月に香港の銀行に長年放置してあった銀行口座の解約について法律相談が持ち掛けられた。香港の弁護士を手配して法的手続きで解約して引き出してほしいとの趣旨である。以前は夫婦家族で香港観光に頻繁に行っていたので香港の銀行に夫婦の共同名義として銀行口座を開設してあった。しかし新型コロナウイルスが蔓延して海外旅行から遠ざかり、香港の銀行に多額のドルを預金したままになっていた。銀行カードを持っていたので日本での買い物に日々使用あるいは引出し手数料を気にせず預金を引出せば良かったが、その余裕がないままパスポートの有効期限が切れて、銀行カードが引出し不能となった。聞くと夫が病気となり夫婦で香港に行くこともままならない状況である。
 もし、配偶者死亡で相続問題なら時間もかかり銀行窓口で苦労する。この辺りの弁護士の苦労談は夏目武志弁護士のコラム「 中国に銀行預金を残して死亡した場合の解約手続について」(註1)が参考にできる。
 しかし、今回は香港の銀行で相続手続きをなすわけでもなく、夫婦が生きているので弁護士を依頼せずに友人一人で香港に足を運んで解約することを勧めた。香港の銀行に通訳を同行して新旧パスポートの身分の継続を証明できれば解約できる。一人が不安なら娘さんと一緒に香港に行くべきだ、わざわざ香港の弁護士を委任するまでもないと回答した。
 2024年11月9日に「ありがとうございます。娘と二人で香港を満喫してきました。」と香港の銀行解約が無事にできたとの安堵のメールが来た。良かった。「自助努力が一番です」とメール返信した。

2、2024年12月1日、中国大連周水子国際空港に約5年ぶりに到着した。現地の雰囲気を感じるため空港タクシーに乗らず、大連地下鉄2号線機場駅から市街地まで5年前に購入してあった地下鉄カード(日本のSuicaと同じ形式のICカードだ)を利用して移動した。
 大連市は山形県酒田市と緯度が同じだが、海に面しており気候は海洋性の特徴があり「温帯大陸季節風気候」に属し、温暖で降雪はほとんどない。しかし、風が吹くと北海道並みにマイナス10度まで冷え込む。12月1日はコートなしでも戸外を歩ける暖かさだったが、翌日は風が吹きコートを着ても冷え込む寒さだった。
 2020年3月以来新型コロナウイルス感染拡大を受けて日本人は中国入国ビザが必要となっていたが、私自身はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)のビジネス旅行ビザを取得しているので、中国入国は円滑にできる。突然の2024年11月22日、中国入国のためのビザ免除の中国外務省ニュースで「中国政府は日本に対して一般旅券保持者のビザ免除措置を適用する」「期間は11月30日から2025年12月31日まで」「ビザ免除となる滞在期間は30日以内」「対象は商業・貿易・観光・親族訪問・交流訪問」と発表された。出入国ビザ無しで一挙に楽になった。中国政府は4年8か月ぶりの短期滞在ビザ免除の再開で今まで滞在期間を15日としていたが30日間と広げ、日本人の往来で観光・ビジネスを盛んにしたいとの意向である。

3、「チャートは語る 現金消えゆくアジア」(註2)は、「・・・中国本土では現金比率は2027年に3%まで下がる見込み。10億人超が使用する「支付宝(アリペイ)」などのQRコード決済が行き届いている。・・・アジアで「脱現金」は急速に進む。・・・」と報道する。中国本土では日本以上に現金決済よりスマートフォンをかざすQRコード決済が日常生活だ。
 2024年12月2日、二つの銀行に出入金停止となっていた銀行口座の開設に向かった。もともとA銀行口座は上海で開設した。新旧パスポートの連携でA銀行大連支店でも停止回復可能だが、同じ銀行口座番号の回復なら約1週間かかるとのこと、しかし新口座の開設なら日本から本人自身が窓口に来ているので時間を要するが本日中にできる、との話だ。中国での買い物にスマートフォン内蔵のソフト「支付宝」支払いの引き落とし口座としてA銀行口座は使用するので、いわゆる「紐づけ」連携が必要でやむなく新口座を作ることにした。新通帳とキャッシュカードを新規に作るのに約1時間かかったが、上海支店と大連支店とのやり取りで、無事にA銀行口座ができスマートフォンのORコードでタクシー代金が支払可能となった。
 続いてB銀行窓口に赴いた。穴の開いた透明アクリル板越しのマイクのやり取りで担当者が確認したところ大連で開設し確かに預金はある。しかし、そもそも口座開設が2002年なので、新旧パスポートだけではなく更に前の古いパスポートを持参しないと停止回復不可能とのこと。出入金の古い銀行記録からB銀行で本人確認ができるはずだと粘ったが、古い記録は倉庫にあるので探すのに約3日かかり、かつ本人が再度窓口に来ないと停止回復できないとの言い分だった。金融犯罪を防止するにはどの国でも銀行の厳格な本人チエックは理解できる。しかし、手元必要資金でやむなくB銀行窓口担当者に現金一万円の両替をお願いしても、有効なパスポートを所持する本人対し、確認必要の人物だとの理由で両替までも拒否されるとは思わなかった。
 日本に帰国してから、B銀行担当者から大連の法律事務所に過去の記録が出てきたので、更新可能との電話が入った。しかし預金者本人が再度窓口に来ないと更新手続きはできないとの言い分は変わらずで次回の課題となった。

(註1)新日本法規出版WEB版2024年5月13日号に、夏目武志弁護士が相続財産である中国の銀行預金の解約手続きを代理人に依頼して行う場合の要点・注意事項を丁寧に解説している。
(註2)日本経済新聞2025年1月26日朝刊一面記事

(2025年1月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

一般社団法人日中法務交流・協力日本機構からの便り 全121記事

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  2. 大連訪問と中国の銀行更新手続き
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  107. 「十一五」規画始動!
  108. 依頼人の人権擁護
  109. 身の安全
  110. 中国で「勤勉さ」を学ぶ
  111. 203高地や旅順口などの戦跡を訪れて思う
  112. 「ソウルで味わった韓流の逞しさ」
  113. 中国と日本の立法・行政・司法
  114. くれぐれも御用心
  115. 海外旅行は、法リスクの宝庫だ。
  116. 互いの理解
  117. 信頼関係の形成に向けて
  118. 中国憲法における「改革・開放」路線
  119. 苦情処理センターの効用
  120. 信頼できる中国人パートナーを得る
  121. 外国への進出と契約

執筆者

菅原 哲朗すがわら てつろう

弁護士

略歴・経歴

(出 身)1948年 東京都生まれ

(学 歴)1972年 東京都立大学法学部卒業
     1975年 司法研修所卒業 (司法修習27期)

(職 歴)1975年 弁護士開業 (第二東京弁護士会)
     2000年 中国大連市外国法弁護士事務所開設

(役 職)

 元日本スポーツ法学会会長
 公益財団法人日本スポーツ協会国民スポーツ大会委員会委員
 公益財団法人日本スポーツ協会アンチ・ドーピング委員会委員長
 第二東京弁護士会スポーツ法政策研究会代表幹事
 一般財団法人モーレイ育英会理事
 一般社団法人心身統一合氣道会理事
 元独立行政法人国立国際医療研究センター理事
 独立行政法人日本スポーツ振興センタースポーツ団体ガバナンス支援委員会委員長

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