一般2017年05月08日 区画整理用語辞典、韓国憲法裁判所の大統領罷免決定時の韓国旅行(法苑181号) 法苑 執筆者:大場民男
法苑はいつも興味深く読んでいます。各人がそれぞれの考えや経験を自由に書いているからです。知人も遠近にかかわらず登場します。元気でいるなと近況報告を聞くような気がします。私も法苑に次の寄稿をしています。本稿執筆に当たって懐かしく読み返しました。
①五一号昭和五八年四月刊「経験の分配」、②六一号昭和六〇年一月刊「時間とのもみあい―五〇歳直前記」、③七四号昭和六四年一月刊「ヨーロッパ縦断―土地問題視察記―」、④八六号平成四年一月刊「『依法』の氾濫―中国旅行記」、⑤一二二号平成一三年一月刊「書くことの重さと怖さ―筆禍事件」、⑥一二九号平成一四年一〇月刊「自治体裁判所と司法改革」、⑦一三七号平成一六年七月刊「身辺整理雑記」、⑧一四一号平成一七年一〇月刊「スロベニア・クロアチア紀行」、⑨一四二号平成一八年一月刊「スロベニア・クロアチア紀行(続)」、⑩一四五号平成一八年一〇月刊「古希雑感」、⑪一五六号平成二一年七月刊「行政法縦横―行政法を使う」
一 区画整理用語辞典
現在執筆中で新日本法規出版株式会社で出版方をお願いしてある本です。
1 パソコンで単語や言葉を簡単に打ち出せる今どき、辞典なるものが、そもそも必要かという根本問題があります。
この問題について平成二八年に出版された次の二書は、辞典の魅力・効用や用語や概念に注目することの大切さを教えてくれ、執筆する自信をつけてくれました。
①「学校で教えてくれない!国語辞典の遊び方」角川文庫
②「キーワードから現代の法を読む」を副題とした「法を考えるヒント」日本加除出版
2 土地区画整理辞典と限定すべきか
区画整理には①都市についての土地区画整理法による区画整理と②農村についての土地改良法による区画整理とがあります。ともに「換地処分」の手法をとっています。両者について体系書を出しているのは私だけですので、両方について書きたいのですが、ボリュームをどうするか、読者に混乱を与えないかなどが心配です。
3 類書には、①「土地区画整理用語集―区画整理のことば―」換地と評価研究会代表清水浩編著・東京法経学院出版部一九八一年刊、②「土地区画整理事典」社団法人全国土地区画整理組合連合会一九九九年刊の二書があります。現在では販売されておりません。
①書は「換地と評価」には詳しいのですが、「直接施行」とかその根拠となる土地区画整理法七七条についての言及は、「建物移転」という用語の外にはありません。裁判例について紹介は全くありません。
②書は長年にわたり土地区画整理事業に携わられた技術者の竹重貞蔵氏の「土地区画整理辞典」一九八五年刊を改訂、追補し「土地区画整理事典」と書名を変更して発行されたものです。建設省の関係者の協力があり、行政的には強化され、土地区画整理法・同施行令・同施行規則の引用はありますが、裁判例の引用はなく、「施行者管理地」のような民事的活用についての言及はありません。
それらの欠点を補充した本にしたいと思っています。
二 韓国憲法裁判所の大統領罷免決定時の韓国旅行
1 国際奉仕団体としてロータリークラブ、ライオンズクラブ、キワニスクラブがあります。私は平成一八年四月から名古屋キワニスクラブの会員になっています。
キワニスクラブは毎年一回、全世界、ブロック(アジア、ヨーロッパ等)、全日本で大会を開催します。本年の第四二回キワニス・アジア・太平洋のブロック大会ASPACは三月九日から一一日まで韓国済州(チェジュ)島で開催されることになっていました。私は韓国へは三回行っていますが、済州島には行ったことがないので参加を希望しておきました。
名古屋キワニスクラブの旅行計画は三月九日から一二日までで済州島での大会に参加、同島の観光後はソウル滞在(観光)ということに決まりました。
2 韓国では、大統領の罷免をめぐるデモ、国会での決議、憲法裁判所での審理が始まり三月一〇日に同裁判所の決定が出ると報道されることになりました。
旅行の時期と右の騒動のタイミングが重なるので、デモに近付くことは危険でしょうが、デモの会場やその附近、憲法裁判所は見聞したいという気持ちが出てきました。
平成二九年三月九日(木)
一三時二〇分に中部国際空港国際出発ロビー旅行会社カウンター一番前に参加者七人とツアーコンダクターが集合しました。天気は四日間とも良好との予報で一同安心しました。
済州島直行の航空機はないとのことで一五時二〇分釜山行きの大韓航空(KE)で出発しました。予定時刻どおりの一七時ちょうどに釜山国際空港に到着し、二時間待ちで済州行き一九時〇五分のKEで出発し、五五分後の二〇時に済州国際空港着でした。
空港は済州島の北端にありますが、専用バスで西に近い韓国料理店「島」の海鮮料理で空腹を満たしました。宿泊先のロッテホテル済州に二二時頃に入りホッとしました。
平成二九年三月一〇日(金)
朝食をすませ、大会会場である済州国際コンベンションセンターへ向かって九時四〇分にホテルを出ました。ホテルと会場との間は地図上一キロ位であるので海岸沿いを歩いて行こうとしましたが、高低が著しく危っかしく時間もかかりそうなので諦めてバスに同乗しました。
一一時に大会が始まったころ、竹内会員のスマートホンに「大統領を罷免する、全員一致の決定」が表示されました。六年前の三月一一日マレーシアのマラッカのアスパック会場で「仙台地方で大地震」の表示により会場にどよめきが起りましたが、今回はどよめきはありませんでした。
一二時に大会場を出て昼食の韓国料理をとり、西帰浦毎日オルレ市場、柱状節理帯(福井県東尋坊を彷彿させる)、ピンクスゴルフクラブ(クラブハウスから九番ホールを眺めながらお茶を飲む)等見聞して、夕方、コンベンションホールでの歓迎夕食会に臨みました。
平成二九年三月一一日(土)
八時二〇分専用バスでホテルを出て済州国際空港へ向かい、一〇時二五分ソウルへ飛び立ちました。乗機した際に飛行機の入口で「朝鮮日報」を手にしました。一面トップにカラーで憲法裁判所の裁判官八人と空席一つ(合計九)の写真が掲載されていました。最初のハングル文字の記事は次のように(罷免)(認容)(憲政)という漢字が入ってました。
ハングル文字は一五世紀に朝鮮王朝の世宗が創らせたものですが、現在では十分に普及して漢字が読めない若者が多くなり、漢字の教育も始めたと済州島の案内人が嘆いていましたが、漢字交じり文の一例と考えると嬉しいです。ハングル表示の地図と道路標識ではどこを走行しているかわからないからです。
ソウルへ近づくとゴルフ場が多く、ソウル市内では驚くほどマンションが林立しているのが見えました。農業用団地も確保されていることには感心しました。一時間五分でソウルの金浦空港へ降り立ちました。一一時三〇分。
金浦空港はソウルを東西に流れる大河・漢江の南にありますから、昼食(アワビビビンバ)後の観光は、韓国民俗村、水原華城(華城行宮とも言います。世界文化遺産)等を廻りました。
明洞西隣りのロッテホテルソウルに投宿しました。
平成二九年三月一二日(日)
最終日です。漢江の北側を観光する予定です。
まず、東西南北四つの大門の一つ南大門は崇礼門と名付けられている所へ行きました。一九八九年に見たときと比べ整備されていました。五年にわたる復旧工事をしたとのこと。幸運にも門番の交替になりました。
崇礼門を北上すると光化門に至ります。ここから世宗路が巾が広く何十万のデモが繰り広げられたのがこことのこと、納得です。テントが残っていたり、警官の姿が見られましたがデモ中の熱気はもうありません。
光化門の北の景福宮は、韓国を代表する壮大な王宮です。見る度に素晴らしいと感心します。しかし、今回はその北にある大統領府(青瓦台)が関心の的です。周囲をバスで廻りましたが広大です。警官も要所要所に立っています。
この夜、朴前大統領はここを去って自宅へ戻られた報道を帰国後見ましたが、午前、見てきたところのことであり、いささか感慨深く思いました。
大統領府の東にある三清洞を見物しました。伝統的な住居と個性的・近代的なショップやカフェ等があり、垢抜けた町という感じです。この交差点にはハングル文字の下にsamchenong-rとあり読めました。ぜひ他所もこうしてほしいです。
帰りは仁川空港であり二時間かかって同空港に着き、一九時〇〇分発のKEで二〇時五〇分に中部国際空港に到着しました。有意義な旅でした。(平成二九年三月一六日記)
(弁護士)
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