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自治2015年09月01日 マイナンバー制度と税理士業務 (法苑176号) 法苑 執筆者:鈴木涼介

1 マイナンバー制度の概要
 マイナンバー制度は、行政を効率化して、国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現するための社会基盤です。 国民の一人ひとりに個人番号(マイナンバー)が、法人等には法人番号が付番されることになります。個人番号・法人番号を利用することにより、行政機関や地方公共団体等がそれぞれ保有する情報について照合や連携がしやすくなるとともに、国民が行政手続を行う際の添付書類が削減できるなど国民の負担が軽減されます。そして、所得状況や社会保障給付の状況を把握しやすくなるため、税負担を不当に免れたり、社会保障給付を不正に受給したりすることを防止することができます。
 マイナンバー制度の根拠法である「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下「番号法」といいます。)は、平成二五年五月二四日に成立、同月三一日に公布されました。番号法は、段階的に施行されていますが、本格的な施行は平成二七年一〇月五日、番号の利用開始は平成二八年一月一日以後からとされています。
 個人番号は、社会保障、税、災害対策分野で番号法に定められた特定の事務で利用することとなります。
 法人番号は、特段、利用範囲が定められていないことから、様々な分野で利活用されることが想定されています。

2 番号法とマイナンバーガイドライン
 マイナンバー制度が導入されることの国民の懸念として、
①集約された個人情報が外部に漏えいするのではないか、②成りすまし等により財産等の被害を負うのではないか、③国家により個人情報が一元管理されるのではないかというものが挙げられていました。この国民の懸念を払拭するために、番号法においては、個人番号をその内容に含む個人情報(以下「特定個人情報」といいます。)の適正な取扱いを確保するために、厳格な保護措置が設けられています。そして、その保護措置の具体的な実務指針として、特定個人情報保護委員会が「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」(以下「マイナンバーガイドライン」といいます。)を策定・公表しています※1。
 ※1マイナンバーガイドラインには、「行政機関等・地方公共団体等編」と「事業者編」とがありますが、本稿においては「事業者編」を前提に説明します。

3 事業者の個人番号とのかかわり
 事業者は、従業員等、地主・大家、弁護士・税理士などから個人番号の提供を受け、その個人番号を法定調書(源泉徴収票、支払調書など)や社会保険などの被保険者資格取得届等に記載して、行政機関等に提出することとなります。この一連の事務を「個人番号関係事務」といい、この事務を行う者(委託を受けた者を含みます。)を「個人番号関係事務実施者」といいます。事業者は、一般的には個人番号関係事務を行うこととなります。なお、法定調書などの提出を受けた行政機関等(個人番号利用事務実施者)は、それらの書類に記載されている個人番号を利用して、保有している個人情報の検索・管理(個人番号利用事務)を行うこととなります。

4 保護措置の概要
 番号法及びマイナンバーガイドラインに定められている保護措置の概要をまとめると次のとおりとなります。
 ① 取得・利用・提供に関するルール
 事業者は、個人番号関係事務を処理するために必要がある場合に限って、従業員等に個人番号の提供を求めることができます。また、番号法で限定的に定められている場合以外の場合は、個人番号・特定個人情報を利用・提供することはできません。
 なお、事業者が、本人又はその代理人から個人番号の提供を受けた場合には、番号法に定める本人確認(番号確認及び身元確認)が必要です。
 ② 保管・廃棄に関するルール
 特定個人情報は、事業者においては、個人番号関係事務を行う必要がある場合に限り、保管し続けることができます。個人番号関係事務を処理する必要がなくなった場合で、所管法令において定められている保存期間を経過した場合には、個人番号をできるだけ速やかに廃棄又は削除しなければなりません。
 ③ 委託に関するルール
 委託者は、委託先において、番号法に基づき委託者自らが果たすべき安全管理措置と同等の措置が講じられるよう必要かつ適切な監督を行わなければなりません。また、委託先が再委託する場合は、最初の委託者の許諾を得た場合に限り、再委託をすることができます。
 ④ 安全管理措置に関するルール
 個人番号・特定個人情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の適切な管理のために、必要かつ適切な安全管理措置を講じなければなりません。また、従業者に対する必要かつ適切な監督も行わなければなりません。

5 税務関係書類への影響
 国税分野においては、国税通則法が改正され、国税に関する法律に基づき税務署長等に申告書、申請書、届出書、調書その他の書類(以下「申告書等」といいます。)を提出する者は、その申告書等に個人番号又は法人番号を記載することとされました※2。番号の記載は、平成二八年一月一日以後の申告書等から記載することとなります。例えば、所得税の確定申告は、平成二八年一月一日の属する年分以降の申告書から記載することから、平成二八年分確定申告書(平成二九年二月一六日から三月一五日までに申告する分)から記載することになります。法人税の確定申告は、平成二八年一月一日以降に開始する事業年度に係る申告書から記載することから、平成二八年一二月決算の法人は、原則として、平成二九年二月二八日までに提出する申告書に記載することになります。また、法定調書については、原則として、平成二八年一月一日以降の金銭等の支払等に係る法定調書から記載することから、平成二八年分給与所得の源泉徴収票や平成二八年分特定口座年間取引報告書(平成二九年一月三一日までに提出する分)から記載することになります。
 ※2地方税関係においても、各種申告書等に個人番号又は法人番号を記載することになります。

6 税理士業務と税理士ガイドブック
 ① 税理士ガイドブック
 日本税理士会連合会は、平成二七年四月七日において、「税理士のためのマイナンバー対応ガイドブック?特定個人情報の適正な取扱いに向けて?」(以下「税理士ガイドブック」といいます。)を策定・公表しました。
 税理士ガイドブックは、「税理士が個人番号を取り扱う事務を適正に遂行するとともに、顧問先企業等への適切な指導を行えるよう、個人番号等の利用が開始されるまでに行うべき準備作業から、必要となる事務手続の具体的手順や留意事項について、関係官庁の協力を得ながら、税理士事務所における業務を中心に取りまとめ、わかり易く解説」したものです。
 ② 税理士業務とのかかわり
 税理士は、税の専門家として、マイナンバー制度と深く関わることとなります。例えば、顧問先企業などの事業者(以下「顧問先企業等」といいます。)の従業員等に関する年末調整事務や法定調書作成事務の委託を受けた場合には、個人番号関係事務実施者として、顧問先企業等の従業員等の個人番号・特定個人情報を取り扱うこととなります。
 また、税理士は、所得税の確定申告や相続税・贈与税の申告において、税務代理人や申告書作成の受託者として、納税義務者本人の個人番号・特定個人情報を取り扱うこととなります。これらの場合は、原則として、個人番号関係事務実施者の立場として個人番号・特定個人情報を取り扱うわけではありませんが、税理士ガイドブックにおいて、「税理士等は、税理士法第三七条(信用失墜行為の禁止)及び第三八条(秘密を守る義務)の規定を遵守しなければならず、また、個人番号関係事務に該当しない事務を行う場合であっても、顧問先の特定個人情報を取り扱うことに変わりはないため、必要かつ適切な安全管理措置を講じる必要があるとともに、本ガイドブックに則り対応してください。」とされていることから、税理士として、どのような立場で個人番号・特定個人情報を取り扱うとしても、やるべきことは変わらないということになります。
 なお、税理士は、税理士事務所を運営するにあたり、従業員等を雇用する場合が多いですが、その場合には、税理士自身が一事業者(個人番号関係事務実施者)として、その雇用した従業員等の個人番号・特定個人情報を取り扱うこととなります。

7 マイナンバーガイドラインと税理士ガイドブックの関係
 マイナンバーガイドラインは、特定個人情報の適正な取扱いを確保するための具体的な指針であり、全ての事業者を対象とする者で、税理士にも例外なく遵守が求められるものです。したがって、税理士は、マイナンバーガイドラインの遵守を大前提として、それに加えて、税理士ガイドブックを遵守することが求められます。
 なお、税理士がこれらを読む際には、前記四の保護措置のうち、①本人確認、②委託、③安全管理措置について、特に注意が必要です。

8 おわりに
 税理士は、従来から顧問先企業等に対して、指導者としての立場も求められています。とりわけ、中小企業においては、税に関する事務以外の事務においても、税理士と相談しながら、事務を進める場合が多いと思われます。
 したがって、税理士は、顧問先企業等が個人番号・特定個人情報を適正に取り扱うことができるように、適切な指導をすることが求められます。
 マイナンバー制度のリーディング業界として、マイナンバーガイドライン及び税理士ガイドブックをしっかりと理解し実践していくことが重要です。

(税理士)

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