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訴訟・登記2018年09月05日 最近の商業登記法令の改正による渉外商業登記実務への影響(法苑185号) 法苑 執筆者:草薙智和

 この数年、会社法の改正、商業登記法・同規則の改正、先例の変更などにより、商業登記の実務が大きく変わってきた。
 ここでは、これらの改正等のうち、外国企業による会社設立などの渉外商業登記の実務に影響がある事項を概観したい。不正な登記を防止するため、役員の本人確認や株主の情報の開示を求められることとなった一方、対日投資の促進のため一定の規制緩和がされた。

1.役員の本人確認証明書(商業登記規則六一条七項)
 平成二七年二月二七日、改正商業登記規則が施行され、株式会社の設立登記、又は、取締役、監査役等の就任(再任を除く。)の登記には、原則として、取締役等が就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(本人確認証明書)の添付が必要になった。外国人役員に関する本人確認証明書については、以下のものが考えられる。
 ①外国官憲が発行した署名証明書(住所の記載のあるものに限る。)
 ②外国官憲が発行した住所が記載された身分証明書等の写し(取締役等本人の原本証明付き)

2.株主リスト(商業登記規則六一条二項、三項)
 平成二八年一〇月一日、改正商業登記規則が施行され、株式会社等の登記の申請に際して、登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合等には、株主リストを添付することが必要になった。
 株主リストとは、議決権数上位一〇名の株主又は議決権割合が三分の二に達するまでの株主のいずれか少ない方の株主について、次の事項を記載し、代表取締役等が証明した書類をいう。
 ①株主の氏名又は名称
 ②住所
 ③株式数(種類株式発行会社は、種類株式の種類及び数)
 ④議決権数
 ⑤議決権数割合
 なお、株主である外国企業等の名称や住所が株主名簿に外国語で記載されている場合には、株主リストに外国語のまま記載しても差し支えないとされている。

3.代表取締役等の住所要件の緩和(平成二七年三月一六日民商第二九号通知)
 昭和五九年以来、株式会社の代表取締役のうち、少なくとも一名は、日本に住所を有する者でなければならないこととされていたが、平成二七年三月一六日、この代表取締役の住所要件が廃止された。これにより、代表取締役の全員が日本に住所を有しない株式会社を設立することも可能になった。
 なお、合同会社その他の持分会社の代表社員やその職務執行者の住所要件も同様に廃止された。
 ただし、外国会社の日本における代表者の住所要件については、会社法八一七条一項後段に規定されているため、会社法が改正されない限り、従前のとおりである。

4.外国人役員の署名証明書について(平成二八年六月二八日民商第一〇〇号通達)
 代表取締役等の就任承諾書、代表取締役を選定する取締役会議事録等、印鑑届書の印鑑について、市町村長の作成した印鑑証明書を添付することとされているが、外国人がこれらの書面に署名しているときは、その署名が本人のものであることの当該外国人の本国官憲の作成した証明書(いわゆる署名証明書)の添付をもって、市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えることができることとされている。
 従前、この本国官憲は、日本における領事その他権限ある官憲を含むとされていたことから、領事については、日本における領事に限定する趣旨ではないかという疑義があった。本通達においては、「当該国の領事及び日本における権限がある官憲を含む。」とされ、領事の所在地国を限定していないため、日本以外の国に駐在する本国の領事も含まれることが明らかにされたと思われる。
 また、本通達においては、外国人の本国の法制上の理由等のやむを得ない事情から、署名証明書を取得することができないときは、登記の申請書に押印すべき者の作成したその旨の上申書及び当該署名が本人のものであることの日本の公証人又は当該外国人が現に居住している国の官憲の作成した証明書の添付をもって、市町村長の作成した印鑑証明書に代えることができることとされた。
 なお、本通達を一部改正した平成二九年二月一〇日民商第一五号通達においては、日本における領事等が署名証明書を発行していないためこれを取得することができない場合、又は日本に本国官憲がない場合には、仮に日本以外の国における本国官憲において署名証明書を取得することが可能であっても、やむを得ない事情があるものとして取り扱ってよいこととされた。
 また、平成二九年二月一〇日民商第一六号依命通知においては、やむを得ない事情がある場合の具体例として、以下の場合が示されている。
 ①外国人の本国に署名証明書の制度自体がなく、本国官憲において署名証明書を取得することができない場合
 ②外国人の本国においては署名証明書の取得が可能であるが、当該外国人が居住している本国以外の国等に
  所在する本国官憲では署名証明書を取得することができない場合
 ③外国人が居住している本国以外の国等に本国官憲がない場合
 上記のとおり、改正後の本通達により、外国人である役員は、居住地国から海外に移動することなく、居住地国の官憲が作成した署名証明書を利用することができることになった。

5.株式会社の設立における出資の払込みをする銀行口座(平成二九年三月一七日民商第四一号通達)
 株式会社を設立する際に、発起人が引き受けた株式について、出資として金銭を払い込む場合は、原則として、発起人名義の銀行口座に払い込まなければならない。
 ただし、外国企業の子会社として株式会社を設立する場合など、発起人が日本の銀行に口座を有しない場合には、発起人が設立時代表取締役に対して払込金の受領権限を委任し、当該設立時代表取締役名義の銀行口座に払い込むことができることとされていた。
 本通達では、設立時代表取締役に限らず、設立時取締役に対して払込金の受領権限を委任することができるとされた。
 さらに、発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合には、発起人及び設立時取締役以外の第三者(自然人に限られず、法人も含む。)に対して発起人が払込金の受領権限を委任し、当該第三者名義の銀行口座に出資金を払い込むことができることとされた。
 払込金の受領権限を委任した場合には、代理人名義の預金通帳のコピー等に加えて、その権限を明らかにする委任状等を提出する必要がある。

 現在、さらに、会社設立手続のワンストップ化、完全オンライン化、即日手続完了などを目指して、様々な検討がされている。海外からの日本に対する投資がさらに増え、日本経済が活性化されることに少しでも貢献できるよう、英語での対応能力の向上、海外企業の窓口としての幅広いサービスの充実など、私も微力ながら努力、研鑽していきたいと考えている。

(司法書士)

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