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一般2018年01月09日 大阪地裁高裁味巡り(法苑183号) 法苑 執筆者:加藤真朗

 弁護士であれば、大阪地裁または大阪高裁に出廷された経験のある方は多いであろう。もっとも、時間に追われている多くの弁護士は出廷後とんぼ返りされて、大阪地裁の周辺をブラブラ散策されたことのある方は意外と少ないのではないだろうか。
 ところが、大阪地裁の周辺は大阪でも特徴的な街であり、また、美味しい食事を提供してくれる店も多い。とんぼ返りされている皆様は損をされているのかもしれない。
 そこで、大阪地裁に出廷された方に有意義な時間を過ごして頂きたいと思い、裁判所周辺の見所を紹介するというテーマを設定した次第である。ところが、私は大阪の地理・歴史などに特段詳しくもなく、さらには文章力にも疑問符がつく。これでは、有意義な時間を過ごして頂くどころか、拙稿を読んで頂くことすら叶わないのではないかと我に返った。そこで、あざとくも、ほぼ万人が関心を有しているであろうグルメ情報かの如くの体裁をとることにした。少しでも読んで頂くためである。駄文ではあるが、紹介するお店の価値については信じて頂きたい。

 大阪地裁は、大阪市北区西天満に所在し、南側は堂島川を隔てて中之島に隣接している。大阪地裁から中之島には、西側の水晶橋を渡るか東側の鉾流橋(ほこながしばし)を渡ることになる。中之島には、御堂筋から東に向けて大阪市役所、大阪府立中之島図書館、大阪中央公会堂と並んでおり、さらに東には、大阪市立東洋陶磁美術館、難波橋(ライオン橋)、バラ園と続いている。
 中之島図書館(明治三七年築)と中央公会堂(大正七年築)は重要文化財にも指定されている大阪を代表するレトロビルであり、一見の価値がある。またこのあたりの水辺は綺麗に整備されており、ちょっとブラブラすると気分が良い。お時間のある方には是非散策して頂きたい。
 まだ期日までに時間があるという方は、東洋陶磁美術館にて心を静めて頂くも有り、バラ園にて美しく咲き乱れるバラを愛でて頂くも有り、ライオン橋を南に渡って、大阪証券取引所を中心とする北浜界隈を散策して頂くのも有りである。ちなみに、難波橋が通称ライオン橋と呼ばれるのは南北にそれぞれ二体ずつの獅子像が配されているからであるが、この獅子像なかなかフォトジェニックな姿形ではある。
 一方、大阪地裁の北側には、老松通りという、かつて大阪天満宮(天神さん)の参道であった歴史ある細い一方通行の道がある。この老松通りを中心として多くの路地が錯綜している近辺一帯には、美術店、画廊、骨董品店などが数十店立ち並んでいる。私は無教養なのでとんと縁がないが、お好きな方は何件か訪れたならば瞬く間に時が過ぎるのではないだろうか。
 また、老松通り周辺には、将棋の対局の場となる『芝苑』(しえん)といった料亭や少し敷居の高そうな料理屋さんもちらほらと店を構えている。美術店・骨董店などと共に、この街に独特の風情を生んでいるように思う。また界隈には法律事務所も多く、大阪ではここだけという特色ある街を形作っている。

 いよいよ、というか、ようやく飲食店の話、味巡りである。
 まずは鰻。『志津可』(しずか)である。裁判所の東、堂島川に面した古風な店構えの老舗である。「江戸流鰻」を名乗る関東風の蒸しが入るお店である。「おいおいそれじゃ関西で鰻を食べる意味がねぇよ」と、お叱りをうけるかもしれない。それはごもっともだが、このお店はぶれることがなくいつも美味しい。やや小ぶりの鰻がほろほろっととろけるうまさが常時味わえる。鰻の燻製サラダもアテとして美味。
 「おいおい折角大阪まで来たのだから関西風の鰻を喰わせろよ」と、仰せの方には、裁判所から少し離れるが、ライオン橋を渡って土佐堀川の向こう岸にある江戸時代から続く本格的老舗である『阿み彦』(あみひこ)をお勧めする。伝統の関西風の焼の香ばしさが味わえる。もちろん柔らかさも十分。関西風では三休橋筋の『柴藤』(しばとう)も著名。

 次はお蕎麦、『なにわ翁』(なにわおきな)を紹介したい。老松通りの東端にある完全自家製粉の手打ち蕎麦のお店。品良く香る蕎麦を辛すぎないまろやかなつゆで食べると、うどん派が優勢な大阪人でも蕎麦好きになること必至。十割蕎麦も洗練されており、つるつるっと喉越しがよい。一方、ゆばそばなど温かいお蕎麦は伝承のお出汁と相まって絶品。温かいお蕎麦でここまでのクオリティはなかなか希有ではなかろうか。また、蕎麦屋さん定番の焼味噌・焼海苔などをはじめ、日々用意されるアテもハズレがない。蕎麦焼酎のそば湯割りを片手にまだ日が落ちていない時間に味わうと最高である(念のために明記しておくが、平日に実行しているわけではない。)。
 なにわ翁より少し西側にある『和豊』(わとう)は斬新なメニューが充実している。鴨とまと蕎麦は、鴨の脂が浮かんだ熱々のお出汁にミニトマトの酸味が調和しておりくせになる。

 おうどんは『衣笠』(きぬがさ)を愛用している。お蕎麦もあるが、私はうどん一筋である。卵とじのあんかけうどん版である鶏卵うどんは芯から温まるので寒い日にお勧め。メニューにはないが天ぷらうどんなどに焼き餅を入れることも可能。親子丼やカツ丼といったどんぶり類を選ぶのも有り。うどん好き、炭水化物好き、お出汁好きの大阪人としてはヘビーユーザーにならざるを得ないお店である。
 「とにかく時間はないが何か腹に入れねばならぬ」というときは、急遽『老松うどん』が選択肢に挙がってくる。衣笠の向かいのカウンターだけのお店で、さささっと食事を済ませることができる。大阪人の大好きな紅しょうがの天ぷらが上に乗った紅しょうがうどんをかやくごはんと一緒に召し上がって頂ければ、最速で大阪フードを押さえることができる。

 天ぷらといえば、『新太呂』(しんたろう)がお勧めである。裁判所の西側、堂島川沿い大江橋北詰近くにある、これまた老舗である。関西風の白い天ぷらをお塩一本勝負で食べると、まさに素材の味を活かしきっている旨さである。あっさりしているため、たっぷり供される塩分控えめの柴漬け(?)をときに摘みながら、コースの最後の天茶まで美味しく頂くことができる。
 「いやいや、ごま油じゃなけりゃ天ぷらじゃねえよ」という方には、西天満から御堂筋を越え北新地にある『ひらいし』がお勧めだ。新太呂と共に、フランスタイヤメーカーの☆がついていたように思う。
 老舗ジャパニーズシリーズが続いたので、次はカレーである。昨今の大阪は、スパイスカレー旋風が吹き荒れるカレー大激戦地である。西天満も例外ではない。全国的カレーチェーンとしては『Co Co 壱番屋』、大阪発のカレーチェーンとしては、『上等カレー』、『船場カリー』が展開している。他にも、『もりやま屋』、『モリ商店』、『タンダーパニー』などのカレー専門店や喫茶店などカレーを供する店が数多存在する。
 伝説の『食堂 玄氣』が西天満から移転した今、私がよく利用するのは、もりやま屋と上等カレーである。もりやま屋は裁判所の西門を出て少しのところ、上等カレーは裁判所から北上して国道一号線を渡ったところにある。スパイスカレーが食べたいときはもりやま屋、伝統的なジャパニーズカレー、特にカツカレーを食べたいときには上等カレーと使い分けている。両者路線が全く違うが、共通するのは、遅いランチ時間でも開いており便利なところ、そしていつもシンプルに美味しいところだ。

 喫茶店では、『なかおか珈琲店』がお勧めである。大江橋北詰の東側、新太呂のやや西側にある。この店の特徴としては、サンドウィッチ、スパゲッティ、ドリア、カレーなどフードメニューの充実ぶりが群を抜いているところだ。飲み物についても、苦み走ったアイスコーヒーは好みの味だし、紅茶の香りも良い。珈琲、紅茶はもう一杯おかわりできるのも良い。ランチを食べて、まったりするのに最高(喫煙可)。
 裁判所の北門を出て、少し東に行ったところにある『画廊喫茶 イーゼル』は伝統的に弁護士に愛されているお店。店名通り店内には絵画が飾ってあり、時を経た木材基調の内装の落ち着きと見事に調和している。但し、ほぼ一〇〇パーセント同業に遭遇する覚悟が必要。

 最後はお寿司。私は断然『鮨ろく』がお勧め。寿司の何たるやを語れる程の経験値はないが、別の寿司屋で食事をした後、やっぱり鮨ろくがうまいわ、となる。全部きっちり手を加えたお寿司で一貫一貫プロの仕事を感じさせられる。関西ではメジャーではないコハダが大好きになったのも、ちょっとイチローとミスチル桜井に似た大将のおかげである。大将の仕事に対する厳しさとその職人気質に触れる度に憧憬と共に焦燥を抱いてしまう。未だ向上心を失っていない故と信じたいところである。

(弁護士)

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